CheRish Brun.|チェリッシュブラン

私のごきげんな毎日

おいしそうな料理の秘密は「あそこで食べたい」という思いにあり

CULTURE&ENT

この秋、またあの伝説の食堂がスクリーンに戻ってきました。
映画「続・深夜食堂」。

前作に続き、今回も監督は松岡錠司さん、そしてフードスタイリストは飯島奈美さん。
何を隠そう、我がCheRish!編集長小路桃子は、飯島奈美さんの大ファン。
レシピ本は全て揃え、そして実際に作って食べています。

このたびの映画公開、Netflixオリジナルドラマ「深夜食堂 –Tokyo Stories-」の配信に合わせて、松岡監督と飯島さんに、本作の見どころを伺いました。

飯島奈美・松岡錠司

もし、めしやのマスターだったら?

今日はお忙しい中ありがとうございます。作品拝見しました。今回の深夜食堂、お品書きにはたった一品、「豚汁定食」だけが載っています。お二人がめしやのマスターだったらどんなお料理を定番メニューにしますか? 

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松岡
なぜお品書きに一品だけしか書いていないか。その理由が最後にちょっとだけ明かされるというのが、「続・深夜食堂」の一つの着地点かなと思っています。だから豚汁定食にこだわっているんですよね。
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飯島
めしやのマスターのストーリーも含め、今回は泣けますよ~。
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松岡
定番料理…やっぱりめしやでは豚汁が一番じゃないですか
深夜食堂 豚汁
めしやの豚汁
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飯島
そうですね。やっぱり豚汁でしょうか。けんちん汁とかもいいかもしれない。
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松岡
マスターが一番苦労したのはこんにゃくじゃないかな。
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飯島
かつらむきも?
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松岡
かつらむきは・・・勘弁してあげてよ。
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飯島
あまり深く、掘り下げないで(笑)
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松岡
ちなみに、映画もドラマも、マスターの料理のシーンはすべて小林薫さんご本人がしています。見どころの一つですよ。
続・深夜食堂 小林薫

おいしさの秘密は観客の願望にあり

一番撮るのに苦労したメニューは?

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飯島
撮るというより、作るのに苦労したのは、あまり映らなかったおせち料理。
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松岡
それ、ずっと言ってるね(笑)。その後ちゃんとおせち料理映しているからね。炊き合わせとか。
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飯島
季節が違ったので、おせち料理の材料を集めるのが大変で。品数も多いですし。でも、どんな料理も見せ方は難しい。作り方が難しい料理はないんですけどね。
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松岡
家庭料理だからね。

家庭料理なのになぜあんなにおいしそうに見えるのでしょう。飯島さんのお料理の腕と、監督の演出の腕の強力タッグによるものでしょうか?

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松岡
それだけでは、説明できないものがあってね。みんながドラマや映画を見ながら「あそこ(めしや)で自分も食べたい」と思っているから、よりおいしそうに見えるんですよ。実際には無理なんだけどね。要するに、手が届かない、でも手が届きそう、と思いながら、みんな料理のカットに見入っているんです。だって食べようと思ったら、自分の家でつくって食べられるものばかりでしょう。でもあそこのカウンターで食べたいという願望があるから、料理がより魅力的に見える。
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飯島
そうなんです。本当に普通のものを作っているんですけど、おいしそう、おいしそうって言われて、変なプレッシャーがあって。異常においしくつくらなきゃいけないみたいな(笑)。
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松岡
なぜお品書きに一品だけしか書いていないか。その理由が最後にちょっとだけ明かされるというのが、「続・深夜食堂」の一つの着地点かなと思っています。だから豚汁定食にこだわっているんですよね。

「おいしい」という言葉が作り手を育てる

私たち、30~40代がお料理を楽しむコツはありますか?

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飯島
喜ばれれば楽しくなるので。パートナーや家族においしいって言ってもらえれば楽しく作れると思います。

めしやのマスターもお客さんに育てられているのでしょうか。

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飯島
カウンターの人の「おいしい」っていう言葉がマスターのやる気を引き出している部分はあると思います。あとは、これはお客さん側のことですが、隣の人が何かをおいしそうに食べていると、普通だったら「私も食べたいけど、恥ずかしいからやめておこう」と思うけれど、あそこの常連さんたち「私もこれ」って平気で頼みますよね。
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松岡
でもあれ、店の経営上は理にかなってて。マスターは「できるものならなんでも作る」って言っているけれど、最初の人に頼まれたものを作って相手が「おいしい」と言うと、他の人もつられて食べたくなり、注文しますよね。そうすると店としては効率的なわけです。
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飯島
そうですね。材料にも無駄がない(笑)。
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松岡
マスターなんて、お客さんに「これ食べるかい?」ってたまに営業しているからね。
続・深夜食堂
ドラマ版でも飯島さんが手がけ数々の美味しいお料理が登場!

飯島さんの作る料理の魅力は?

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松岡
料理が魅力的なのはもちろんですが、飯島さんは本番の前に料理を出してくるタイミングが独特なんですね。僕は「間合い」と言っているのですが。当然のことながら、料理が出てくるシーンでは、料理が運ばれてこないと、スタートがかけられない訳です。俳優たちも、すぐにでも台詞を言いたいけれど、じっと待つしかない。
撮影場所の一角にある薄暗い台所で、マイペースで料理作っていた奈美ちゃんが、緊張で張りつめている空間に、すっごくおっとりと料理を持ってくる(笑)。飯島さんというフードスタイリストが、料理をベストの状態で映すために「本番ぎりぎりまで現場を待たせることができる」という権限を持っているんですよ。そんなことも想像しながら見てもらえると、より楽しんでいただけるかと思います。
フリーライター菅原然子(すがわらのりこ)
大学で数学、大学院で教育社会学を専攻後、月刊『婦人之友』(婦人之友社)、月刊『教員養成セミナー』(時事通信出版局)等の記者・編集者を経て独立。
人物インタビューや教育関連記事を中心に、多分野の記事を書いています。
夫婦+コドモ2人(♀)の4人家族。
趣味はチェロを弾くこと。
動物と、文字と、音楽をこよなく愛するもの書きです。
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