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私のごきげんな毎日

【前編】料理も撮影も文章を書くのも、私にとっては全て「創作活動」〜『東京弁当生活帖。』出版記念座談会〜

CULTURE&ENT

東京弁当生活帖。』は、東京に住む杉森千紘さんが自身の弁当生活を中心につづったブログ「東京弁当生活。」の10年分をまとめた本です。実はCheRish編集長の小路桃子と杉森さんは元同僚同士。思い出話に花をさかせつつ、編集の中島さんにも加わっていただき、この本の誕生秘話を聞きました!

出席者
杉森千紘さん――『東京弁当生活帖。』(セブン&アイ出版 2017年)著者。
中島元子さん――『東京弁当生活帖。』担当編集者。
小路桃子――CheRish編集長。杉森さんの元同僚。
菅原然子――聞き手+文・構成

泳いでしまった杉森さん

泳がせてみたら泳ぎ切った

菅原:仕事柄、本の奥付から見てしまうのですが、「料理、撮影、文 杉森千紘」って、全部担当されたんですか?!

杉森:そうですねえ。

中島:最初の打ち合わせで、ライターとカメラマンは自分でやりますと言われて・・・

菅原:すべてのお弁当の写真の下に200字の文章がありますが、これが面白い。

中島:この短い文の中に起承転結がすべて含まれているんです。すごいですよね!

杉森:これは、2~3日でがーっと書きました。写真を全部撮り終わった後です。

菅原:お弁当が123個紹介されていますが、すべて撮り下ろしたのですか?

杉森:全部作って、全部撮りました。

中島:私としては、もともとブログがあったので、一部は撮り直しかもしれないけれど、大部分はブログからと思っていました。そしたら打ち合わせで「全部撮ります」と言われて。

小路:そう言われてどう思いました?

中島:無理って(笑)

杉森:「超大変ですよ?! 大丈夫ですか?」って言われた(笑)

中島:まぁ、実際に撮り始めたらあきらめるだろうと思っていました。だから最初は泳がせてみようかと。

今回の書籍の制作&撮影はほぼ実家の台所にて

杉森:そしたら泳ぎ切った(笑)。東京の自宅の台所では手狭だったのと、一人暮らしでは撮影で作った料理を消費し切れないので、福井の実家に合宿と称して撮影のために帰省しました。実家の台所でひたすら作って、玄関で撮って。あ、玄関で撮影したのは、一番光りの具合がよかったからですけれどね。東京での用事もあったので、行ったり来たりしながら、正味41日間の撮影。

中島:その最初の合宿で30個分くらいのお弁当が撮影されました。私は東京にいたのですが、撮影された写真がどんどんドロップボックスに上げられていくんです。なので、私も毎日チェックできました。

この著者は「新生物」

杉森:最初の打ち合わせの時、「すべての情報を共有したいので、制作過程は全部クラウドで!」とお願いしました。あとスケジュールも自分で細かく立てました。

中島:私、どちらかというとけっこう細かくスケジューリングして、著者にそれを伝えてお尻を叩く、というタイプなのですが、杉森さんは全部自分でそれをされてました。

小路:そうそう・・・だって、「ももちゃん、私本を作ることになった!」って言って、まずエクセルの表作ってたもんね。

杉森:段取り命!だから。以前勤めていたIT企業に、エクセルの達人がいたんです。何かプロジェクトが立ち上がると、まずチームで打ち上げの日時と場所から決めていました。そこから逆算してすべてのスケジュールを立てる。エクセル上で終わった仕事をチェックしていくと、同じ画面上にすべての任務のうち、何パーセントが終了したかが出てくるようになっていて。私も今回同じようにスケジューリングをしました。

中島:最初の打ち合わせで、出版後のプロモーションのこと話した著者初めてですよ(笑)。

杉森:「この時期にフェイスブック立ち上げて」とかね。この本、半年くらいかけて作っているけれど、その間に旅行に行く予定もあったし、最初にすべて可視化して段取りをたてておかないとだめだと思ったので。

菅原:中島さんとしては一緒に本を作りやすい著者でしたか?

中島:作りやすいもなにも、新生物です!こういう人には初めて出会いました。

菅原:今回の本づくりでの、中島さんの主な役割は?

杉森:ジャッジです。中島さんはこちらが聞くと判断が早い。それから褒めてくれること。私、褒めると伸びる子なんで(笑)。

菅原:写真も美しく、文章は面白く、料理も上手。どれが一番好きってありますか?

杉森:うーん、特にどれってないですよ。弁当作るのも文章書くのも写真撮るのも、私にとってはすべて「創作活動」という感じ。

菅原:でも、本が出来上がった時は感動したのではないですか?

中島:それが・・・私が感動して「とうとう出来上がりました!」と、ちょっとウェットなメールを送ったら、「あーそうですか」というとってもあっさりしたメールがきて。ガクッとしました。

杉森:だって、作るまでの過程が面白かったから。遠足も、計画する時が一番面白いでしょ。

食べたいものを持って行く

小路:IT企業時代、最初はお弁当持って来ていたの、杉森さんくらいだったよね。

杉森:そう。私としては、外食続きでこれはいかん!と思って作り始めたんだけど、他にあまりいなくて。自分のデスクで食べるには、においが出ると申し訳ないかなと思って、自動販売機の隣の、椅子がある狭いところで一人で食べてた。

小路:杉森さんは12時になるとピタッと席からいなくなってお弁当食べてるの。だんだん杉森さんに刺激されて、お弁当作る人が増えてきたんだよね。私もそのうちの一人だったけれど。

杉森:お弁当だと、さっと食べて、昼休みの後半はカフェでゆっくりできるのも良かったよね。

小路:あとは、無理してなかった。たまにランチ会があったりすると「今日は作ってこなかったから行こう」とか「夜にお弁当食べるから行こう」とか。

杉森:給料日には2500円の寿司食べに行ったりしたよね(笑)。

小路:そうそう。むしゃくしゃした日には、部長もいるのに「ちょっと私たちランチビール飲ませていただきます(笑)」なんてことも少なくはなかった。

菅原:なんというか、そういう自由さをこの本全体から感じます。弁当の内容にしても、「え?!これを持って行くの?」というのもけっこうあって。

小路:私は、麺にびっくりした。普通に麺とつゆを杉森さんが持って来ているのを見て、お弁当ってパンとかご飯だけじゃなくていいんだ、と。この本にも「氷見の昆布うどん弁当」が出てるね。

氷見の昆布うどん弁当
食べたいものを持っていく!それが杉森流。

杉森:普通に食べたいものを持って行っていたから。むしろ、何が弁当の「普通」なのかがよくわからなくて、本を作るとなったときに、最初に中島さんに聞いたわ。

中島:聞かれました。だから麺類とか、あとおでんとか、普通じゃないですからって言った記憶があります。

(3月27日公開の後編へ続く・・・)

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フリーライター菅原然子(すがわらのりこ)
大学で数学、大学院で教育社会学を専攻後、月刊『婦人之友』(婦人之友社)、月刊『教員養成セミナー』(時事通信出版局)等の記者・編集者を経て独立。
人物インタビューや教育関連記事を中心に、多分野の記事を書いています。
夫婦+コドモ2人(♀)の4人家族。
趣味はチェロを弾くこと。
動物と、文字と、音楽をこよなく愛するもの書きです。
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