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私のごきげんな毎日を送るライフスタイルマガジン

働く・暮らす・寛ぎの場とそこに生まれる人達の繫がりを全国に 佐藤仁美(HAM株式会社 代表取締役社長)

大人女子のおしごと事情
factoria 佐藤仁美

佐藤仁美さんは、西荻窪でコワーキングペース「factoria(ファクトリア)」を運営。2017年の開業から地道にメンバーは増え、長期間の利用者が多いのも特徴の1つです。前職の飲食事業から不動産事業への転身の理由、お仕事に込めている思いを伺いました。

大好きな西荻窪でコワーキングスペースを開く

――コワーキングスペース「factoria」とは?

2017年に開業しました。私が考える、コワーキングスペースとは、お客様がビジネスで成果を出すためのツールの一つ、なので、そのためにどのような環境つくりをするのがよいのかを考え、試行錯誤を繰り返しながら実現しています。具体的には、場所そのものを居心地のよい空間にするのはもちろん、メンバー同士が繋がる仕組みつくりや、アドバイザーによる事業相談サポートや各業界トッププレイヤーばかりが集う非公式なイベント開催などのコンテンツつくりなどです。

――メンバーになりたい方にはまずインタビューをなさるそうですね。

はい。factoriaはメンバー同士の繫がりを最も大事にしているので、入会を希望する方のお話を実際にうかがって、その方のビジネスにfactoriaが最適であるかどうかを考えるようにしています。使い方や仕事のスタイルなど、ここよりももっと向いている場所があると思えば同業他社さんをご紹介するなどしています。

factoria 佐藤仁美

同業他社さんをご紹介するのは、前職の飲食店でも行っていました。お店のあるエリアでお客様にできるだけ気持ちよい時間を過ごしていただきたいと思えば、自分のお店が満席なら他をご紹介する。そこで楽しい時間を過ごしていただければ、同エリア内にあるうちのお店にもまた来てもらえると考えていましたし、実際に再訪していただくことが多かったと記憶しています。

――人とのつながりを大事にしているのが印象的です。なぜこのようなビジネスを思いつかれたのですか。

飲食事業の一店舗があった青山通りの不動産の様子をずっと観察していたら、路面店であっても長期間空室が続いていたり、有名な店舗が入ってもすぐに撤退してしまったりしていたんです。その時に考えた仮説は、これからの不動産は、立地条件やスペックだけでは選ばれなくなってくる。これからはコンテンツ力やコミュニティ力が重要で、とがったコンテンツがあれば、立地条件などに関わらず、どこでもお客さんは来ると思ったんです。

西荻窪には2017年当時、他にコワーキングスペースはありませんでしたが、自分がとても好きな場所だったということと一見するとオフィスニーズのなさそうな非常にチャレンジングな環境だったということが理由で、西荻窪を選びました。今では多くのメンバーさんが長期にわたって利用してくださっています。また、サポートフルな方が多くて、仕事面でもお互いにサポートし合っているということも結構あります。

factoria 第1回Grit〜やり抜くチカラ〜
4月に開催されたイベントもfactoriaのサポートフルな1つ

キャリアスタートは栄養士

――佐藤さんのキャリアの一番最初は栄養士なのですね。

地元、九州の短大で栄養士の資格をとり、卒業後は製薬会社の外務栄養士をしていました。2年間、医師や薬剤師などの医療従事者のために、栄養と薬のマッチングなどの勉強会をしたり、食事療法についての研修をしていました。

ですがある日、実家のベランダから外を見ていたら、成人式を終えた弟が、仲間たちとバイクで爆走している姿が見えたんですよ!その光景を見て、「あ、好きなことしなきゃ!」って思って(笑)。翌日上司に「辞めます」と伝えて、3か月後に退職しました。

――それはまた衝撃的な(笑)。飲食店をと思っていたのは最初からですか?

いえ、具体的計画はなかったです。けれど、もともと実家がカレー屋を営んでいたので、飲食店は身近な存在でした。資金調達のために2年間、福岡と東京の飲食店で朝から朝までアルバイトをしてお金を貯め、27才のときに起業しました。

factoria 佐藤仁美のノート
佐藤さんのノート。

最初は赤坂見附にある老舗しゃぶしゃぶ店の経営再建事業にお声がけ頂きました。まずは店長として入って、その後は自社のスタッフに店長を任せ、彼らと共にチームつくりをし、経営が軌道にのってきた約1年後に、今度は表参道にワインバーを開店しました。こちらはゼロから店づくりをしたので、一店舗目の経営再建とはまた違った大変さがありました。立地は表参道のど真ん中でしたが、空中階店舗だったので、認知度を上げるのに大変苦労して。営業もマーケティングもポスティングも、泥臭いことも何でもやりました。

factoria 佐藤仁美
飲食事業を手がけていた当時

――2店とも軌道にのっていた2015年に、事業譲渡したのはなぜですか?

一番は、私はチャレンジするのが好きなのに、このままコンフォートゾーンにいて満足してしまってはだめなのでは、と思ったから。また、そんな人が企業のトップをしていたらチームもお店もダメになると考えたからです。

factoria 佐藤仁美

もともと起業するときに、持続可能なビジネスをつくることが大事だと思っていたので、自分がいなくても事業がうまくまわるように強いチーム作りをして、1年間それで経営が安定しているのを見届けてから事業譲渡しました。

――強いチームつくりに必要なことは何でしょう。

factoriaの運営にも通じるのですが、同じ価値観の人を集める、ということです。そこは絶対に譲らずにきました。人が集まらなければ、自分で何でもやっていましたね。妥協はしたくなかったので。

実際にチームを作って動き出したら、メンバー一人ひとりがどんなことが好きで、何を考えているのかをいつも聞いていました。そしてみんなが気持ちよく働けるような環境づくりをしていましたね。メンバーが楽しく働ければ、その先にいるお客様も気持ちよい時間を過ごしていただけますから。

――事業譲渡後、2年間は何をされていたのですか?

factoria 佐藤仁美

8か月間は充電期間、休んでいました。それまでの2年間、睡眠時間3時間で休みを一日もとらずに働いていたので、心身ともに疲れていたんだと思います。飲食事業を辞めたら離れていった人もいました。最初は悲劇のヒロインだと思っていましたが、よく考えたら自分自身が面白ければ、仕事を離れても人との関係は続くはず、と気づきましたね。その後は不動産事業の準備です。

誰もが望むライフスタイルを選べるように

――飲食業から不動産業に移ったのはなぜですか?

先ほどと重複しますが、私は持続可能なビジネスをしたいと思っていて、「では次に何をやろうか?」と考えたときに、人間にとって必要不可欠な衣食住にかかわることだと。衣は自分には無理、食はやりきって結果も出せた、じゃあ次は住=不動産だなと。不動産の使用用途としては、働く、暮らす、寛ぎの場があると考え、それらを国内外に展開していきたいと考えて、その第一歩としてコワーキングスペースを始めました。

factoria 佐藤仁美

――会社のミッションを、「誰もが望むライフスタイルを選択できる社会をつくる」とされていますが。

小さいころから、私はやりたいことや食べたいものとか、言えばすぐに叶う環境にいました。

その当時、両親が経営していた店には、大学病院に研修に来ているアジアからの留学生がたくさん来ていて、その人たちからいろいろな話を聞き、なぜ世界には苦しんでいる子がたくさんいるのか、同じ子どもなのに、なんでこんなに違うんだろう?と思っていました。

また、同大学病院の学生には、いわゆる苦学生がたくさんいて、両親はそういう学生さんたちに食事をはじめ、さまざまな支援をしていたみたいなんです。

その方たちがお医者様になってから、両親がしていたことを聞き、感動しました。

困っている人がいたら自然にサポートする両親のもとで育ったことは大きいと思います。飲食店の経営をしていたころ、児童養護施設さんと連携して、子どもたちのインターンシップを受け入れていたのもそうした原体験があったからです。

factoria 佐藤仁美

いろんなバックグラウンドの人と接してきた中で、誰もが望むライフスタイルを選べて、幸せに暮らせるような社会になればと思うようになりました。そのために自分には何ができるかを常に考えています。

――佐藤さんのビジネスでのチームつくりも、コワーキングスペースでのメンバー間の繫がりづくりでも、人を大事にされる姿勢はそうしたご経験からのものなのですね。今後はどのような事業を考えていますか?

不動産事業を拡大をしていきたいので、場所探しはずっとしています。「働く」はコワーキングスペースなど仕事場、「暮らす」は家やマンションなどの住居、「寛ぎ」は別荘や宿泊施設や飲食店など、不動産の使い方は、この3つしかないと思うので、それらを展開していくことが私と会社のビジョンです。

佐藤仁美(サトウヒロミ)

HAM株式会社 代表取締役社長
1982年生まれ、大分県出身。
製薬会社の営業兼外務栄養士を経て、2010年HAM株式会社を設立。
大分県庁のインバウンドマーケティング支援事業、赤坂見附と表参道にて飲食店運営、同飲食事業を2015年に事業譲渡。
2017年、コワーキングスペース・factoriaを西荻窪に開業し、運営。
今後も人と人とが繋がる場つくりを通じて、不動産の資産価値を高めることを目的に、働く・暮らす・寛ぎの場を日本国内外に複数展開予定。
factoria:https://www.factoriajp.com/

お仕事を成功させるために心がけていることは?

ビジネスはもちろん、アート、サイエンス、フード、学術など惹かれるものをどんどんと取り入れて感性を磨き、自分をアップデートさせること。

オンとオフの切り替え方法は?

仕事のことを考えない時はないので、オンとオフは意識的に切り替えるようにしています。 オフになるためには、茶道をしたり、東京を離れて自然の中で過ごす時間を持つようにしています。

今、プライベートではまっていることは?

茶道、アウトドア、マンホール写真撮影、器集めです。

イスラエルのマンホール

10年後はどんな風にお仕事をされていると思いますか?

一箇所にじっとしていることが苦手なので、国内外を飛び回り、多様なカルチャーの人達と共に仕事をしていたいと思います。

これからの夢は?

影響力を持つことです。私のミッションは「誰もが選択の自由を持てる社会をつくること」です。そして、私がビジネスを通じて幸せにしたい人達は下記の3タイプです。
ミッションを達成するためには、影響力が必須だと思っているので、その力をつけるのが今の目標です。
❶サービス(ビジネス)を提供する私達自身
❷ビジネスに関わる全ての人達
❸生まれ育った環境のジレンマを乗り越え、チャレンジしたいと思っている人達

フリーライター菅原然子(すがわらのりこ)
大学で数学、大学院で教育社会学を専攻後、月刊『婦人之友』(婦人之友社)、月刊『教員養成セミナー』(時事通信出版局)等の記者・編集者を経て独立。
人物インタビューや教育関連記事を中心に、多分野の記事を書いています。
夫婦+コドモ2人(♀)の4人家族。
趣味はチェロを弾くこと。
動物と、文字と、音楽をこよなく愛するもの書きです。
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