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私のごきげんな毎日を送るライフスタイルマガジン

【ワークスタイル】長く、履きこめる靴を  靴づくり屋chisaka千阪実木さん - 3

大人女子のおしごと事情

デザインの歴史も紐解きながら

――個展やネット上のHPを見てお客さんがいらっしゃるのだと思いますが、どういった注文を受けるのでしょう。
基本的には既存のサンプルの中からデザインを選んでいただきますが、先日はリピーターのお客様に「サイドゴアを作ってほしい」とのリクエストをいただきました。私はそれまでサイドゴアはつくったことがなかったので、どうしようかと迷ったのですが、直後にもう前金も振り込まれていたため、これはやらねばと(笑)。

足の形は人そ れぞれ。お客さまの足に合わせて木型を補正して靴をつくります
足の形は人そ れぞれ。
お客さまの足に合わせて木型を補正して靴をつくります

まず、サイドゴアという靴の歴史を紐解くところから始めました。形から、カジュアルなものなのかと思っていたのですが、発祥は1830年代のイギリスで、ヴィクトリア女王のために脱ぎはきしやすいブーツをと、ロンドンの靴屋がつくったのが最初であることがわかりました。通常靴の納期は3〜6ヶ月ですが、このサイドゴアは試作から始めたので収めるまでに8ヶ月もかかりました。ただ、靴の形には、このように歴史があります。自分が手を加えるにしても、デザインの大元をわかっていることは大事だと思っています。

古代ローマの兵士の履物「カリガ」を子供用にアレンジしたサンダル
古代ローマの兵士の履物「カリガ」を子供用にアレンジしたサンダル

――聞けば聞くほど奥の深い世界です。
そうですね。2006年に靴の学校を卒業してから、もうすぐ10 年になろうとしています。生活のためにアルバイトと2足のわらじを履いていた時期もありましたが、2年前からは靴づくり一本にしました。ただ、納得のいく良質な革で、修理のきく製法で靴をつくるとどうしても高価になってしまい、商売としての難しさを感じているのが正直なところです。ですが、お客様から修理を依頼され、戻ってきた靴を見た時に、とても丁寧に磨かれて、大事に履かれていることがわかると、嬉しくなります。そして、いろいろ大変なこともありますが、もうちょっとだけ頑張ってみたい、と思うのです。

フリーライター菅原然子(すがわらのりこ)
大学で数学、大学院で教育社会学を専攻後、月刊『婦人之友』(婦人之友社)、月刊『教員養成セミナー』(時事通信出版局)等の記者・編集者を経て独立。
人物インタビューや教育関連記事を中心に、多分野の記事を書いています。
夫婦+コドモ2人(♀)の4人家族。
趣味はチェロを弾くこと。
動物と、文字と、音楽をこよなく愛するもの書きです。
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