やわらかな陽射しが漂うサントロぺの海辺で、ひとりの花嫁が砂浜を歩いていた。
裸足で砂粒の温かさを感じながら、1歩、また1歩と進んでゆく。海の気泡たちが次々、シュワッと祝福の音を立てる。
こんな素晴らしい日には、華美なドレスは要らない。オーガニックコットンで作られたシンプルで仕立ての良いワンピースに「Voile Blanche」。それだけがいい。それが心地いい。野生の花々と、潮風のノート。耳の上に挿したジャスミンが香り立つ。
何にも染まらない“白いヴェール”が香りと共に風にはためくと、ゆっくりと空に舞い上がり海にそっと身を沈めた。花嫁はまた1歩前へ進んでゆく。
私たちはいつまでもどこまでも自由。でも寂しがることはない。時に、誰かのためにしなやかに姿を変えながらも、本質はどこまでも揺らがない。
そうでありたい。それが私の誓い。
緋色と黒の鮮やかな色打掛を羽織ると、花嫁は大きく息をついた。今日は偉人たちの婚礼へのオマージュ。クラシカルでプリミティヴ。
支度前の花婿は、緊張した面持ちで「Rose Privée」を纏う。生花のグリーンさを感じさせながら、繊細な花々の香りがモダンに佇んでいる。目に見えない香りのアロマティックブーケをそっと渡すと、花嫁の瞳が黒曜石のようにきらりと輝いた。
袴の裾からは、懐かしい干し草の香り。子供の頃に夢中になって遊んだ田園風景がよみがえる。葉の陰に隠れた小さな天使の羽のようなムスクが香る。ノスタルジーはいつだって、喜びと共に訪れるものだ。
まもなく、雅楽と共に儀式が始まる。様々な出会いは1つの想いに形を変えて、二人の物語はドラマティックに、そして優しく造形されていくのだ。
水面にちらちらと見え隠れする鯉たちの背は、まるで紅白の旗を振るように揺れていた。
舞い上がったその香りは、どこまでも無垢で柔らかく甘い。
陽に照らされて黄金色に輝く彼女の髪がふわりとなびくと、ガーデンパーティーの参列者にたちの元へも、「ヴィーヴ・ラ・マリエ」の香りが届いた。
まるで香りそのものが光を発しているかのように彼女の姿は輝きを増し、オレンジフラワーの煌めくエッセンスが、その魅力をより一層確かなものに変えた。
そしてまもなく、誓いの場で彼がたくしあげる1枚のヴェールが、2人の間に何の壁もないことを証明するだろう。これから先、どんな苦境も乗り越えられる2人であると手を重ねる。
参列者たちはそっと見守る。
未来がいつまでも、素晴らしい香りに満ちているように、願いをこめて。
晴れ渡った空に、色とりどりの風船が流れていった。
【掲載製品】
■IL PROFVMO「Voile Blanche 」 50ml ¥13,000+税 / (株)セモア tel.03-6753-2753
■L’Artisan Parfumeur 「Rose Privée」 100ml ¥23,000+税 / ラルチザン パフューム表参道本店 tel.03-6419-9373
■パルファン・ロジーヌ パリ 「ヴィーヴ・ラ ・マリエ」50ml ¥13,500+税 /株式会社フォルテ tel.0422-22-7331