CheRish Brun.|チェリッシュブラン

私のごきげんな毎日を送るライフスタイルマガジン

香水ジャーナリストという仕事について

魔法の香り手帖
パッサージュ ダンフェ

香水に携わる仕事の人は、日本では特に秋~年末にかけて最も多忙になると思うが、私も同じで7月末頃からザワザワ始まり、8月から9月は執筆や水面下の準備に追われ、10~11月で催事などの本番を迎える。近年は、日本の香水市場の急激な拡大に伴い、百貨店や商業施設での香りに関する催事やイベントも急増し、秋以外の季節にもあちこちでPOP UPなどが行われるようになってきた。

私の仕事である「香水ジャーナリスト」は、今のところ日本に私一人しかいないため、どんな仕事をしているのか基本的には理解されにくい。「美容ジャーナリスト」は、美容全般や化粧品などについて、業界全体の動きを把握しながら、トレンド予想や、製品への見解を述べたり、評論を書いたりする人々のことだ。雑誌などの編集者出身の人がほとんどであり、あまりユーザーと積極的に触れ合う人は多くないように思う。

その点、私は全く異例のタイプだと言える。元々は音楽業界出身であるし、2003年から2013年までは、今で言うところのインフルエンサーのような活動をしてきた。だから、2013年にプロに転向すると決めた時から1~2年の間は、メディアにも化粧品ブランドにもインフルエンサーとしての対応されることが圧倒的に多かった。同時にそれは、プロではないと言われているようにも感じたし、早くプロのジャーナリストとして認めてもらえるように頑張るしかないと強く思ったものだ。

あれから10年以上が過ぎ、ジャーナリストとして認識してもらえることの方がほとんどとなり、現在は「香水ジャーナリスト」という日本になかった肩書で仕事ができるようになった。メディアでの香水記事に監修やコメント出しをすることも増え、製品の香りのディレクションや、トレンド予想なども増えた。私は、SNSでの香水愛用者とのコミュニケーションをとることを大切にしている。その点も異例のジャーナリストかもしれないが、実際に購入した人や使用している人の考えや意見は、ブランドの意向と齟齬があることも多いからだ。意図が上手く伝わっていないブランドや香りもあれば、良かれと思ってしたことが受け入れられていないブランド、また想定外の受け入れ方をされている香りなどもある。

私は香水を仕事にしながらも、香水を愛する一人のユーザーであり、買い物もたくさんするため、購入する側の気持ちが分かる。そして仕事の上ではメディアの気持ちも、販売店舗の気持ちも、ブランドの気持ちも理解できる。その良い架け橋になりたいという想いが強い。もっと日本で香水を楽しむ人を増やしたい。

その結果、私は意見を伝える執筆やコメント提供やイベント出演だけでなく、香水のカウンセリングもするし、店頭に立ってゲスト販売員を務めることもある。ジャーナリストが店頭に立ってはいけないルールはないし、私は「インフルエンサーではないけれど、インフルエンス力を持った香水ジャーナリスト」という、誰も類似ポジションが居ないところへ自分をブランディングしているつもりだ。外から見れば、仕事に節操がないように見えるのかもしれない。それでも私は自分の中の軸はぶらさずに、仕事の範囲を制限しすぎずに、「YUKIRIN」にとって有りか無しかで判断していきたい。そして、これからもっと価値を上げていく。

今秋も、色々な場所で香りの仕事ができていることに、深く感謝している。これも応援してくれている人がたくさんいるから、成立することだ。香水イベントの華やかな場に出ると、ドラマティックな香りにたくさん出会うが、多忙を極めた時にこそ、ふと原点に帰れる香りを纏いたくなる。原点の気持ちを忘れないように、今日は「パッサージュ ダンフェ」を纏おう、旧ボトルで。


【掲載商品】
■L’artisan Parfumeur
「Passage D‘enfer」
https://www.artisanparfumeur.com/

美容ジャーナリスト香水ジャーナリストYUKIRIN
ナチュラルコスメとフレグランスのエキスパートとして、
「香りで選ぶナチュラルスキンケア」や、「香りとメイクのコーディネート」など提案する他、香りから着想される短篇小説を連載中。

媒体での執筆・連載の他、化粧品のディレクション、イベントプロデュース、ブランドコンサルティングなど幅広く活動している。
Follow :
Share / Subscribe
Facebook Likes
Tweets
Hatena Bookmarks
Pinterest
Evernote
Feedly
Send to LINE