山梨県北杜市の八ヶ岳南麓にある、日本の香水工房「金熊香水」。香水の小ロットOEMとして、さまざまなブランドの香りを作ってこられ、今年はじめてオリジナル製品をローンチ。
日本には近年、オリジナルの「香水」を作れるという発信で店舗型のオーダーメイドフレグランスが増えているものの、その多くは雑貨扱いのルームスプレーの製品であり、体にまとう香水ではないケースが多いです。
ルームスプレーをオリジナルのブレンドで作れるのも楽しいですが、体に塗布する香りを作りたい場合は、その登録を取得している店舗や会社である必要があります。
金熊香水は、肌にまとえる香水を、「カスタムラボ」というオンラインでセミオーダーのような形で作ることができる「金熊カスタムブレンド」のサービスを展開しています。
今回は、金熊香水よりお話をいただき、私も3本オンラインで「金熊カスタムブレンド」にトライしてみました。
これからトライしてみたい人にもわかりやすく、私が行ったステップをご紹介しながら、実際に私が作った3本の香りを解説していきたいと思います。
- まず、どんな香りを作りたいかテーマを考えることから始めます。
イメージから考えるも良し、使いたい香料からテーマを考えるも良しです。
例えば、「秋の空」という香りを作ってみたいなと思ったら、それを深堀りしてキーワードを出していくことをおすすめします。
暑さが収まり、カラッとした晴れた秋の空なのか、まもなく冬の訪れを感じさせる少し切ない秋の空なのか、中秋の名月を見上げる秋の夜空なのか、といったキーワードを考えていきます。
- 香りの配合調整を行います。
ここでは使いたい香りを選んでいきますが、まずはベース香料の中でもラストノートに使うベースを選んでいきます。
このベースノートは配合比率が多くなりますので、考えたテーマに最もマッチするベースノートを選ぶことが大切です。
金熊香水は、ベース香料が既に色々な香りのブレンドとなっていますので、初心者でも失敗しにくくなっています。
- ベース香料の中から、トップノート・ミドルノート・ラストノートを選んでいくと失敗も少ないですが、香水好きな方ならトッピング香料に激しく惹かれること間違いありません。
有料となるオプションのトッピング香料は、バニラ、オスマンサス、サンダルウッド、イリス、パチュリ、ベチバー、ヒノキ、アガーウッド、ベルガモット、ユズ、ジュニパーベリー、ジンジャー、シナモン、ブラックペッパー、クローブ、ワインリース、スペアミント、ユーカリ、イランイラン、ジャスミンAbs、ネロリ、ローズオットー、チュベローズ、ジャスミンサンバック、セダーウッド、フランキンセンス、グレープフルーツ、オレンジ、プチグレン、レモン、ライム、コリアンダー、ローズマリー、カモミール、ペパーミント、ゼラニウム、ラベンダーと、たくさん種類があります。
その中で、テーマに合うオプションを選んでいきます。
但し、トッピング香料には配合上限があり、ベース香料とのバランスをうまくとらないと、トッピング香料を使ってもあまり目立たなくなる場合があります。
この辺りは、プラス料金でも配合上限を2倍まで可能にできるなど、今後は対応が増えると良いなと思っています。
- ベースとトッピング香料が決まると、大枠の骨子は見えています。
トッピング香料と相性の良さそうなベース香料のミドルノートを加えます。
トップノートは、爽やかさや最初のインパクトを強めたい場合は比率を高めに、重厚感のある香りに仕上げたいときはトップを控えめにすると良いですよ。
- 金熊香水で面白いのが、選択した香料のブレンドについて、AIがテキストを考えて解説してくれるところです。
これはまだ変な文章のこともありますが、そこはご愛敬。
なかなか香りを文章にすることに慣れていない方は、AIテキストが役立つと思います。
ここまで来たら、最終オーダー。2週間ほどで手元に届きます。
以上が、私が解説する制作ステップ。
そもそも大きな失敗はしないように、よく考えられたベース香料が揃っていたり、トッピング香料も配合上限が決まっていて、失敗を避けるためによく考えられているなと思います。
誰がトライしても、一定のクオリティが担保されているため、安心して試してみていただけたらと思います。
ここからは私がオーダーしたカスタム香水3本の香り、チュベローズの感情を表現したコレクション “de la Tubereuse”について解説していきます。
テキストなどはAIではなく、私のオリジナル。遊びで作ったコレクションですし、改善点や課題もありましたが、とても面白く創ることができました。
また金熊香水のクオリティのおかげで、成立しているとも言えると思います。
【チュベローズの憂鬱 / Melancolie de la Tubereuse】
香調:オリエンタル ウッディ
ストーリー:
ただの憂鬱、それだけなのに心を捉えて離さないダウナーなモードの中に漂う、ありのままのセンシュアルな香りを表現。バルサムノートをオーバードーズし、ドライなウッディやアーシーなパチュリの中で、主役のチュベローズが輝きます。
TOP:リーフィーシトラス、ホワイトフローラル
MID:チュベローズ、ジャスミンAbs
BASE:バルサム、ドライウッディ、パチュリ、ホワイトムスク
良かった点:
トップの割合をとにかく減らし、ほとんどトップノートを感じないレベルまで下げ、ベースのバルサムを全体の53%、ドライウッドを22%と高配合に設定したことで、憂鬱な時間の中に佇むような仄暗さが表現できた。
改善点:
ベースの割合を高くし過ぎたため、主役のチュベローズがそこまで主張が強くない。トッピングの上限いっぱいまでは入れてもらっているが、もう少しチュベローズ感を入れたかった感は否めない。上限があるところの限界かもしれない。
【チュベローズの絶頂 / Pic de Tubereuse】
香調:ムスク オリエンタル
ストーリー:
この上なく満たされた夢心地のニュアンスをスウィートムスクとホワイトムスクのダブルムスクで表現し、じわりと浮かび迸るアクアがアクセントに。主役のチュベローズとパウダリックなイリス、なめらかなサンダルウッドが官能的なハーモニーを奏でます。
TOP:アクア
MID:チュベローズ、イリス、サンダルウッド
BASE:スウィートムスク、ホワイトムスク、スウィートウッディ、バルサム
良かった点:
どこかに突出した割合にしなかったため、全体的にまとまりが良く、表現したかったテーマとマッチした香りに仕上がった。良くできていると思う。
改善点:
ほとんど無し。あえて言うならば、チュベローズがもっと目立ってほしい。
【チュベローズの微睡 / Le sommeil de la Tubereuse】
香調:グリーン シトラス
ストーリー:
風が吹き抜ける草原のベッドで、陽光の中うつらうつらと眠るような、儚いまどろみに心を預ける香り。グラスグリーンとリーフィーシトラスが草原の清々しさを、ベルガモットやレモン、ライムなどのシトラスノートが陽光を届け、大地の上で樹々に囲まれたベッドを乾いたウッディノートが表しています。チュベローズはネロリのアロマティックな甘さと融合し、バニラの余韻を残します。
TOP:シトラス、グラスグリーン、リーフィーシトラス
MID:チュベローズ、ネロリ、アロマティックラベンダー
BASE:バニラ、ドライウッディ
良かった点:
シトラスとグリーンノートの主軸を置き、トップノートの主張が強くなりすぎるか心配したが、非常にまとまりの良いイメージ通りの香りに仕上がっていた。ネロリがチュベローズを引き立てており、またバニラを加えたことでシトラスやグリーンに引っ張られすぎない絶妙な良いバランスが生まれた。
改善点:無し。
いかがでしたでしょうか?
オーダーすると、このような素敵なボックスに入って届きます。
試してみたいけれど、どうしようかなと思っていた方、この記事で初めて知ったという方も、ぜひトライしてみてくださいね。
【掲載商品】
■金熊香水 カスタムラボ
24mL ¥8,800~
https://labo.kinkumaperfume.com/