人とのつながりから生まれる
――独立されたのはいつごろですか?
33歳の時でした。もっといろいろな仕事をしてみたいと思い始めたのと、ちょうどその頃会社の経営状況があまりよくなかったというのもあって。独立しますと社長に伝えたら、退職金など何も出せないけれどと、最新のマック(PC)とレーザープリンターを揃えてくださいました。
営業はしませんでしたが、知り合いの紹介で、お仕事を頂くようになりました。ただ、忙しさには波がありますね。フリーランスの宿命だと思いますが、いくつも仕事が重なったかと思えば、ある時は1か月まるまる暇だったり(笑)。
――独立してから一番印象的だった仕事は?
あるハードウェア企業の、店舗に出す棚をまるまるデザインした仕事です。立体のデザインは初めてでした。先方からのかなり細かい指示もあり、とても苦労して、もう打ち合わせにも行きたくない、と思ったこともありましたが、なんとか納品しました。
ただ、この仕事をした結果、その後に大手化粧品メーカーさんや、製薬会社さんから、イベントで出すブース全体のデザインを頼まれた時に、お引き受けすることができたので感謝しています。
――一つひとつの仕事内容が確実にステップアップにつながっているのですね。仕事をする中で気を付けていることは何ですか。
グラフィックデザイナーの仕事は、自分の作品を世の中に出すというより、お客さまの中にあるイメージを具体化するお手伝いをしている、という意識が私には強いです。だからお客さまとのコミュニケーションを特に大事にしています。
そして、最終的には、できたものを見る、不特定多数の人たちに受け入れられるものでなくてはなりません。そのためには、今の時代に求められているものは何か、も常にアンテナをはってインプットしようと努力しています。
――結婚、独立、2010年には出産もされています。
保育園に預けて働くという選択肢もありましたが、娘が生まれたら、もう可愛すぎて離れたくなかった(笑)。赤ん坊の頃は、それこそ抱っこして、授乳しながら仕事していましたね。動き始めるようになって、本当に忙しいときは近所の義両親が預かってくれたりと、助けられて仕事を続けてこられました。
――タイムスケジュールを拝見すると、お子さんとの時間も大事にされていますね。
やっぱり、子どもが小さいのは今だけなので。仕事は以前ほどできなかったとしても、その時期その時期の精一杯の形で、続けていきたいと思っています。