CheRish Brun.|チェリッシュブラン

私のごきげんな毎日

天に香をくゆらせて

魔法の香り手帖

1

お香の楽しさを知ったのは、大人になってからだ。
子供の頃は、匂い玉や液状の香水に夢中で、お香は「線香」の印象が強かった。学生の頃は、謎めいた「インセンス」を自宅で焚く友人も居たが、私はそれほど得意ではなかった。得も知れぬ甘さが頭を痛くさせた。

しかしながら、お香にも良し悪しがあると大人になって知った。良質なものは格別であり、また和という枠に限ったものだけでもない。意外にも「楽しみたいと思えば、いかようにも楽しめる」のがお香かもしれないとすら思う。

私の好きなアスティエ・ド・ヴィラットには、素敵なインセンスホルダーがある。
「MARGUERITEインセンスホルダー」はマーガレットの花がイメージされており、花開く中にすらりと1本インセンスを挿せば、煙が優雅に時間の流れを先導してゆく。

OPERAというインセンスは、フランス オペラ・ガルニエをイメージして創られた。蜜蝋で磨かれた木版張りの大ホール。そこで踊るバレリーナたち。ホールの屋根裏の蜜蜂の巣箱から流れ出す蜜蝋と蜂蜜、白檀と安息香の香り。ゆっくりと夜を動かすような香り。

朝の澄んだ空気には、30種のハーブと樹皮をブレンドしたニールズヤード レメディーズの「メディテーションチベットインセンス」を。
チベット難民がネパールに逃れた際、困窮する生活を支えるため、難民で医師でもあったチベットの僧侶が、このインセンスの作り方を難民達に伝授したそうだ。

空気を静かに深く整え、一日の始まりを瞑想によって始めさせてくれる。一般的にイメージする「お香」とは違い、強く香りを立ち昇らせるものではないが、静寂を破らせないような、ゆるぎない大地を感じることができる。

2

もっと身近に感じることができるお香もある。
名刺にほんのりと香り付けをすることができる、香十の「名私香」。

自分の顔とも言える名刺には、自分を表現できるような素敵な香りをほんのり忍ばせておきたいもの。お渡しした相手が、後でふわっと自分を思い出してくれるようにと願いを込めて。
私の好みは、沈香の中でも良質なものを差す「伽羅」や、サンダルウッドとしてアロマテラピーでも馴染み深い「白檀」。

3

サンタ・マリア・ノヴェッラのアルメニアペーパーは、トスカーナの古い教会を訪れているような香り。手帖や本の栞として使ったり、バッグの底に忍ばせたりして使うことができる小さな短冊形の紙香だ。
私は旅先の部屋についた時、空気の浄化のために蛇腹に折って火を灯す。それだけ、で、部屋の氣の流れを整えてくれるような気がする。

4

香を焚き、昇る煙が天へ吸い込まれていく姿は、人間の古来の焚火を想起させる。
星明りしか見えない夜に、原始的な火というエレメントを見つめ、当時の人は何を思ったのだろう。
あれこれ考えながら、細い煙が天へ昇るのを見送っていたら、
ふと初秋の空と目が合った。

5

【掲載製品】
■アスティエ・ド・ヴィラット「MARGUERITEインセンスホルダー」¥13,000+税 / 「インセンス OPERA」¥4,800+税 / H.P.DECO tel.03-3406-0313
ニールズヤード レメディーズ 「メディテーションチベットインセンス」18本入り ¥1,000+税/ ニールズヤード レメディーズ お客様お問い合わせ窓口 フリーダイヤル 0120-554-565
香十「名私香白檀」「名私香伽羅」各¥300+税 / 銀座香十本店 tel. 03-3574-6135
サンタ・マリア・ノヴェッラ 「アルメニアペーパー」 18枚入り ¥3,300+税 / /サンタ・マリア・ノヴェッラ銀座 tel.03-3572-2694

美容ジャーナリスト香水ジャーナリストYUKIRIN
ナチュラルコスメとフレグランスのエキスパートとして、
「香りで選ぶナチュラルスキンケア」や、「香りとメイクのコーディネート」など提案する他、香りから着想される短篇小説を連載中。

媒体での執筆・連載の他、化粧品のディレクション、イベントプロデュース、ブランドコンサルティングなど幅広く活動している。
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