CheRish Brun.(チェリッシュブラン)

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【MOVIE】あゝ、荒野

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あゝ、荒野

久々にある邦画に衝撃を受けました! 今回紹介する、前篇157分、後篇147分の青春ボクシング映画『あゝ、荒野』が、今年もあと残すところあと約3カ月現在の私の今年の暫定1位の映画となりました。「寺山修司原作」「菅田将暉×ヤン・イクチュンのW主演」「ボクシング」と、私の大好きなキーワードが並んでいたので、鼻息荒く観に行ったのですが、想像以上の内容で大興奮でした。ずっと緊張が途切れない状態で、ときに大笑いし、最後は大泣きし、二人の孤独な青年の生き様を約5時間かけて見届けました。長時間の映画で集中力が切れなかったのは上映時間237分の『愛のむきだし』(2009)以来、観終わっても同感覚の衝撃が収まらなかったのは『セッション』(2015)以来です。

ふとしたきっかけで出会った新次(菅田将暉)とバリカン(ヤン・イクチュン)。見た目も性格も対照的だがともに孤独な二人は、ジムのトレーナー・片目(ユースケ・サンタマリア)とプロボクサーを目指す。お互いを想う深い絆と友情を育み、それぞれが愛を見つけ、自分を変えようと成長していく彼らは、やがて逃れることのできないある宿命に直面する……。

幼い頃に自分を捨てた母を憎み、周囲に牙をむく新次役を菅田将暉くんが演じ、野獣のようにスクリーンで暴れ回っています。『そこのみにて光輝く』(2014)同様、危うく狂気を持った若者を演じたら、彼の右に出る役者は今いないですね。しかも今回はボクサーという肉体作りと激しい濡れ場にも挑んでいました。菅田くんはインタビューするとスマートな回答をするし、歌をうたわせたら上手いし、本当にバケモノ(いい意味)ですね。これからも彼から目が離せません!

また、新次の兄弟分のバリカンを、『息もできない』(2010)で自ら監督・脚本・製作・主演を務め、世界各国の映画賞を総ナメしたヤン・イクチュンが演じています。『息もできない』では「シーバーラーマー」と連呼していたあのヤン・イクチュンが、本作では引っ込み思案で吃音と赤面対人恐怖症に悩む役どころを繊細にかつ切なく体現しています。

そして、ユースケ・サンタマリアさん、高橋和也さん、でんでんさんら脇を固める俳優陣も最高です。ユースケさん扮する片目が、主役の二人のリングネームを発表するシーンはもう涙が出るほど笑いました。あの独特の間! 一体どこまでがアドリブなんでしょうか!?

そんな彼らを起用しまとめ上げ、興行的な回転よりも二部作で極限まで描き切ってくれた岸善幸監督も素晴らしい! 1966年の新宿が舞台だった原作を、本作では2021年の新宿に変更。奇しくも両方とも東京オリンピック後の日本を描いているのですが、寺山修司氏が原作を書かれた当時の社会ムードを、岸監督は上手く現代に反映させていると思います。また、漫画『あしたのジョー』の力石徹の葬儀を主催するほどボクシング好きの寺山修司氏の想いを受け継ぎ、ボクシングという題材に果敢に濃密に挑戦してくれました。『サウスポー』でもボクシングの名作に少し触れましたが、洋画に比べると名作が少ないと思う邦画(『キッズ・リターン』(1996)と『どついたるねん』(1989)は好き)ですが、ついに日本を代表するボクシング映画が誕生したと言えます。

ネオンの荒野・新宿でもがきながらもボクシングへの挑戦で心の空白を埋めようとする二人の絆と、周りの人々との人間模様を描いた、切なくも苛烈な青春ストーリー『あゝ、荒野』。今年これほど魂を揺さぶられた映画はありません!

あゝ、荒野
前篇:10月7日(土)/後篇:10月21日(土)新宿ピカデリー他 二部作連続公開
(C) 2017『あゝ、荒野』 フィルムパートナーズ
kouya-film.jp




Author's Profile

GLAM編集長/エディター・ライター國方 麻紀(くにかたまき)
香川・丸亀出身、東京・吉祥寺在住のアラフォーのエディター・ライター。
女性誌『ELLE JAPON』『VOGUE JAPAN』のウェブ・エディターを経て、現在は女性サイト「GLAM」編集長に。
好きな映画のジャンルは、バイオレンスや時代劇、B級など。
「このコラムを読んで普段観ないようなジャンルの映画にも興味を持ってもらえたらうれしいです!」

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