「夢を見るのに、遅すぎることはないのね」。
見返りを求めずに慎ましく暮らしてきたロンドンの家政婦ハリスが、「クリスチャン ディオール」のドレスに魅せられ、私は“透明人間”ではないのだと、自分のために新しい一歩を踏み出す物語。王子様と結ばれるという月並みな設定ではないのが素晴らしく、ドレスに恋をしてさまざまな人との出会いを引き寄せ、夢を追いかけながら人生を輝かせていく女性の姿は、世代を超えて共感や感動を呼びます。
第二次世界大戦後のロンドン。夫を亡くした家政婦のエイダ・ハリス(レスリー・マンヴィル)は働き先でクリスチャン ディオールのドレスに出会う。あまりの美しさに魅せられたハリスは、ディオールのドレスを手に入れるためにパリへ行くことを決意する。なんとか集めたお金でパリへと旅立った彼女が向かった先は、ディオールの本店。威圧的なマネージャーのコルベール(イザベル・ユペール)から追い出されそうになるが、ハリスの夢をあきらめない姿勢は会計士のアンドレ(リュカ・ブラヴォー)やモデルのナターシャ(アルバ・バチスタ)、シャサーニュ侯爵(ランベール・ウィルソン)ら出会った人々を魅了していく。果たして彼女はクリスチャン ディオールのドレスを手に入れて、夢を叶えることができるのだろうか……。
主人公のハリスは、ひたすら親切で、打たれ強く、常に人の良いところを見出そうとするチャーミングな女性。アンソニー・ファビアン監督曰く「ハリスは、偽りのない人なんだ。周囲の人が彼女に惹かれるのは、彼女が自分らしく生きているから。自分自身も仮面を被らないし、周囲にいる人々も、偽りの自分を装うのをやめたくなる。彼女と一緒にいると、ありのままの自分でいたくなるんだよ」。
ファビアン監督は、そんなハリスの優しさや魅力を表現できる女優として、『ファントム・スレッド』(2017)でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされたレスリー・マンヴィルを抜擢。レスリーは、ハリスに内在する意欲をぜひ表現したいと思ったそう。「彼女は、とてもパワフルなの。力強い人なのよ。ドレスは、実現不可能だと思えることをやり遂げることができるという事実を象徴している。夫の死を乗り越えて、自らの運命を決定する一人の女性として立ち上がることを表しているの。上流階級ぶった横柄な態度を打ち砕き、誰もが大切な存在であることを証明した。人に勇気を与える素晴らしい物語よ」。
「私にとっては、ドレスが全てなのだ」(クリスチャン・ディオールが回顧録に記した有名な言葉)。
本作のもうひとりの主人公ともいえるのが、観客の目を奪う美しいドレスたち。ディオールが全面協力して、『眺めのいい部屋』(1986)や『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)、『クルエラ』(2021)でアカデミー賞衣装デザイン賞を受賞したジェニー・ビーヴァンが衣装を担当。当時のデザインを再現したメゾンでのファッションショーをはじめ、心浮き立つシーンがたっぷりと織り込まれています。
全米では今夏の大作がひしめく中で公開された『ミセス・ハリス、パリへ行く』。1000館以下の公開でありながら2週連続トップ10にランクインし、全米映画評論サイトRotten Tomatoesでは公開後1カ月を過ぎても評論家、観客ともに90%以上の支持獲得。ドレスに恋をしたことで新しい出会いを引き寄せ、人生を輝かせていくハリスの姿に、困難な時代や境遇に直面している現代の人々も触発されるはず。
『ミセス・ハリス、パリへ行く』
11月18日(金) TOHOシネマズ シャンテ、渋谷ホワイトシネクイント他全国ロードショー
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