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私のごきげんな毎日

【ワークスタイル】美しく、おいしく、身体にもいい和菓子 黒岩典子さん(和のかし 巡) - 2

大人女子のおしごと事情

心穏やかに一生続けられる仕事は?

――製菓とはまったく関係のない業種で働かれていたのに、なぜ和菓子の世界にはいられたのでしょう。
きっかけは、私が49歳のとき、夫が白血病で亡くなったことが大きいです。彼はテレビ局でディレクターをしていたので、好きな仕事とはいえかなり激務だったと思います。あとはバターや甘い物が大好きで、それこそホットケーキやパンにバターのかたまりをのせて食べるのが普通という食生活をしていました。何が原因だったかわかりませんが、ある時血液のがんであることがわかり、闘病の末に52歳で亡くなりました。

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その後、知り合いの美容ジャーナリストが、ガンになったご自身のお父様に毎日マクロビ弁当を届けていることを知り、食生活の改善で病気を治すという意識が、自分にはまったくなかったことに気づきます。実はアメリカ時代からマクロビオティックについてはある程度知っていたのに、夫が病気の時には、そうした身体によい食べ物で病気を治すことは思いつかなかったのです。

そして自分自身の状況です。会社員時代はとにかく忙しく、遅い帰宅。仕事のストレスで体調もすぐれず、体温も34度台で、体全体ががちがちにこっていました。そして夫からは「寝言でもずいぶん激しく指示出しをしている」と言われたことがあり、ああ、私は寝ている時も完全に休めてはいないのだな、と思っていました。こうしたストレスと体をどうにかしたい、と思っていたのです。夫が亡くなった時、もうすぐ50代だし、心穏やかに楽しく、そして健康に過ごしたい。でも私が仕事をしないことは考えられない。だとしたら、一生続けられるそういう仕事はないかなと考えていました。

雑穀桜餅は優しいお味
雑穀桜餅はキヌア入りのやさしいお味

AVEDA時代に、西洋医学、東洋医学の双方について精通しているお医者さんが「病気か病気でないか、というのは、体の中の血が巡っているか、巡っていないかの違いなんだ」とおっしゃったことも覚えていて、私は和菓子が好きだから、体によい、血の巡りをよくするような和菓子をつくれたら、と考えました。私自身が作るというよりは、そういう和菓子を作る人をプロデュースしたいと考え、探していました。

――最初はご自身で製作しようということではなかったのですね。そういう人は見つからなかったのですか。
そうです。ある時友人から、「それならあなたがつくればいいじゃない」と言われて。それで仕事を辞めてから、あらためてマクロビについて体系的に学び、その後製菓学校の夜学で勉強しました。日中は和菓子屋さんで修行です。製菓学校にはアルバイトの募集がいくつも出るのですが、それを頼りに応募するも、3社で撃沈。おそらく私の履歴書を見て、どう扱ったらよいかわからなかったのだと思います。あとはやはり、修行であれば、若くて力のある人を採用したいというのが正直なところでしょう。

大福「福巡り」を作っているところ
大福「福巡り」を作っているところ

最終的に、切腹最中で有名な新正堂で働かせていただきました。24歳と26歳のアルバイトの先輩からいろいろ教えていただき、毎朝7時前から、みたらし団子の仕込みから始まり、あんこづくりや各種和菓子の仕込みを並行してする毎日。休みは日曜日だけでした。ここで和菓子の製造行程を覚え、学校卒業後も半年間働いて、「正社員に」というお声掛けもいただいたのですが、自分が考えていたお菓子をつくりたいと退職しました。

フリーライター菅原然子(すがわらのりこ)
大学で数学、大学院で教育社会学を専攻後、月刊『婦人之友』(婦人之友社)、月刊『教員養成セミナー』(時事通信出版局)等の記者・編集者を経て独立。
人物インタビューや教育関連記事を中心に、多分野の記事を書いています。
夫婦+コドモ2人(♀)の4人家族。
趣味はチェロを弾くこと。
動物と、文字と、音楽をこよなく愛するもの書きです。
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