今宵、チュベルーズと踊ろう魔法の香り手帖その日の彼はずっとそわそわとして、仕事もおぼつかない状態だった。使い古されたエプロンのポケットには、小さく折りたたんだ紙が1枚。何度も読み返しすぎて、シワと手垢が滲んでいる。 「ボケッとつっ立ってんじゃないよ!ほら、お客さんだよ!」 叔母に...July 16, 2015Read More
若草の頃魔法の香り手帖深呼吸と共に目を開くと、まばゆいばかりの緑が広がっていた―。 新緑の季節、やっと休みを合わせることができた私たちは、束の間のバカンスを楽しむために植物の生命力に満ちた火山島を訪れることにした。日常の疲れを忘れリフレッシュに期待を込めて。 そ...May 21, 2015Read More
あなたと出会う香りたち魔法の香り手帖白いシャツをサッと翻し羽織ると、母が用意してくれた細いストライプのネクタイを締めた。まだ何となく慣れない窮屈さ。しかしそれと同時に、これから出会う「仕事」に高まる気持ちを抑えきれず、彼は肩を上下させながら大きく息を吐いた。 僕の第一希望の企...April 16, 2015Read More
香りがくれる贈り物魔法の香り手帖12月のメリーゴーランドを走る馬たちの鼻先には、美しい香りの贈り物がぶら下がっている。ある馬の鼻先にぶらさがる、赤い缶のギフトボックスを私は手に取った。 その小瓶からこぼれ落ちた香りは、ペンハリガンからの贈り物。香りもボトルも慎ましやかで清...December 18, 2014Read More
モノトーンの足音魔法の香り手帖深夜にコツコツ…と、誰かの足音が近づく音で目が覚めた。 寝室の扉のすき間から漏れる仄かな光をたよりに、そっと部屋を抜け出すと、そこには光と影、白と黒。色の無い世界が広がっていた。 黒々とした木のふもとでは燃えさかる薪の炎が白く揺らめき、空の...November 20, 2014Read More
天に香をくゆらせて魔法の香り手帖お香の楽しさを知ったのは、大人になってからだ。 子供の頃は、匂い玉や液状の香水に夢中で、お香は「線香」の印象が強かった。学生の頃は、謎めいた「インセンス」を自宅で焚く友人も居たが、私はそれほど得意ではなかった。得も知れぬ甘さが頭を痛くさせた...September 18, 2014Read More
パウダリックという名の薄衣魔法の香り手帖夏の終わりが近づいている。 みずみずしいオゾニックな香りや砂漠のような乾いた土地を感じる香りは息をひそめ、どこか懐かしいパウダリーな香りをまといたくなる。 パウダリーという言葉が、どこか懐かく感じる響きを持っているのは、ベビーパウダーや、子...August 21, 2014Read More
夕暮れに香りをのせて魔法の香り手帖夏に向かい次第に日は長くなり、より「夕暮れ」を感じることができる季節は初夏。 夕暮れ、夕闇、黄昏…。それらの言葉に香りを添えたら、それは疲れて歩く帰り道ではなく特別な時間に姿を変える。 夕焼け空を見上げている時に、ほのかな風が運ぶ誰かの優し...June 19, 2014Read More
雨に香れば魔法の香り手帖雨が降り注ぐ日、少し憂鬱になりそうな心を曇らせない魔法のステップ。 まず、傘に少しだけこだわりを持ってみる。 好きな色、好きな柄、好きな素材、空にかざすだけで心が躍る傘を用意してみる。 そして雨の日に肌にまとう香りを選ぶ。 素肌につま先から...May 15, 2014Read More