夏に向かい次第に日は長くなり、より「夕暮れ」を感じることができる季節は初夏。
夕暮れ、夕闇、黄昏…。それらの言葉に香りを添えたら、それは疲れて歩く帰り道ではなく特別な時間に姿を変える。
夕焼け空を見上げている時に、ほのかな風が運ぶ誰かの優しい香り。
または、地下鉄の入口から突如巻き起こる風に乗って、身体ごと浮き上がりそうなほど感じる香りの渦。
週末どこかへ出かけた帰り道、はしゃいだ後の気怠さを癒す香り。
昼でもない、夜でもない。
その一瞬に似合う香りは、刹那的で少しだけ切ない。
これほど夕暮れの香りにフォーカスをあて表現した香りがあっただろうかと思わずにいられない、ラルチザン パフューム「L’ETE EN DOUCE (ひと夏の夕暮れ)」。
決して派手な主張はしないけれど、夕暮れの切なさをラルチザン パフュームという額縁の中にしっかり捉え、とてもノスタルジーに香る。
野ばら、干し草、菩提樹の木・・・子供の頃、自然の中で見た夕日や、頬にゆれた草花の匂い。
「このまま外で遊んではいられない。帰らなきゃ」という寂しさと、家の温かさを思って感じる優しさ。
私はこの香りを纏うと、プラネタリウムが始まる前のような、夜の星座が顏を出す前の一瞬を、強く思い出す。
春の花として旬を少し過ぎた今頃だからか、夏の夕暮れに纏うと何だか寂しく感じられるのが、サンタ・マリア・ノヴェッラの「オーデコロン ミモザ」。
可愛い黄色の花は姿を変え、ほんのりエロティックな野性味を覗かせてくれる。
オーデコロンはスプレーでつけず、手にとりバシャバシャとラフに纏うのが私の習慣。
まるで身体から発する水分が、元からミモザの香りであったかのように肌になじみ、夕暮れ前のひと時に華を添えてくれる。
限りなく夜に近い、太陽が隠れたけれどまだ少し明るい、そんな瞬間にはシスレーの「ソワール ドゥ リュンヌ」が良く似合う。
フランス語で「月の夜」を意味する香り。
ローズドメイ、カモミール、パチョリ、ミモザ、コリアンダー…。
何の香りなのか一瞬では捉えきれないような少し謎に満ちたトーンが、ミステリアスな夜への通り道にしっくりとくる。
石畳をほのかに明るく照らす凛とした自立した女性らしさは、夕暮れから夜へ香りの道案内となる。
さぁ、太陽が沈んだ。
今夜はどこかへ出かけようか、やっぱり温かい家へ帰ろうか。
【掲載製品】
L’Artisan Parfumeur 「L’ETE EN DOUCE (ひと夏の夕暮れ)」 100ml ¥17,280(taxin) / ラルチザン パフューム表参道本店 tel:03-6419-9373
サンタ・マリア・ノヴェッラ「オーデコロン ミモザ」100ml ¥15,120(taxin) /サンタ・マリア・ノヴェッラ銀座 tel:03-3572-2694
sisley 「Soir de Lune(ソワール ドゥ リュンヌ)」 30ml ¥13,500(taxin) / シスレージャパンtel:03-5571-6217