CheRish Brun.(チェリッシュブラン)

好きと心地よいがつくる、私らしく楽しい暮らし

ネフリティスの羽根~第二篇

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『ネフリティスの羽根~第一篇』はこちら⇒https://cherishweb.me/40644

(続き)

ベルナールはエテ棟へ運ばれてきた夕食をとりながら、苛立ちを隠せずにいた。

ジュブワはなんであんなに落ち着いているんだ?1週間前に受け取った招待状には、「20年前のことを知っている」と確かに書かれていた。しかし、あの時現場にいたのは奴らとジュブワとオレだ。くっそ、翡翠は一体どこにあるんだ。あの時だって必死に探したのに、結局見つからなかった。翡翠はあの一家の所持する宝として有名だった。ウリエルも翡翠欲しさにこの館を買ったに違いない。見つけてくれたらこの土地と館を渡すだって?ばかばかしい。翡翠はこの土地や館の何倍もの値段がする。皇帝の瞳とまで言われた芸術品なんだから…。

棟の前に置かれたワゴンにあった食事を終え、ベッドへひっくり返った。まぁいいさ、明日ジュブワと手分けして宝探しだ。態度の悪い新聞記者と、頭の悪そうなダンサーは放っておいて大丈夫だろう。

いつしかベルナールは眠りに落ちた。そして真っ暗闇の中、電話が鳴る音で目が覚めた。枕元にある子機の赤いランプが光っている。誰だこんな時間に…。手に触れた瞬間、ベルナールはけたたましい悲鳴を上げた。熱い!痛みと同時に皮膚が焦げる匂いがした。子機は一瞬手を離れたかと思ったら、のたうち回る顔の上に落ちた。ベルナールは絶叫し意識を失った。


2日目、朝食の後、ジュブワはベルナールの居るエテ棟へ向かった。内線を使って電話をしてみたが全く出ない。携帯電話は、初日にウリエルが回収し、お帰りの際に渡しますとのことだった。外部と連絡を取られてはまずいのだろう。

エテ棟で呼び鈴を鳴らしたが誰も出てこない。ドアに鍵はかかっておらずすんなりと開いた。あいつ、酔っぱらって締め忘れたか?長い廊下を通過し、ダイニング、浴室、ベッドルームと周ってみた。姿はない。むしろここに一度も足を踏み入れていないのではないかと思うほど、人の居た気配がなかった。荷物もない。帰ったか…あいつは昨日不安がっていた。20年前のことを挑戦的に知らせてきた人間を気にしていた。夜中に急に逃げ出したのだろうか。しかし、離脱者に帰りの車は用意されない。歩いて吹雪の中出ていくだろうか…。

私は内線を使い、ウリエルへ電話をかけた。ベルナールが居なくなっていると伝え、全員を広間に集めてもらうことにした。もし20年前の事件を知る招待者がこの中にいるなら、何かぼろを出すかもしれない。まずは表情や反応を見てやろう。1時間後、広間に全員が集まった。ウリエルは冬だというのに、アイスジャスミンティーをそれぞれに配った。夏への敬意ですとのことだった。透き通るような陽射しが、洋館の窓から差し込む。どこかリゾート気分にしてしまうような、ジャスミンの香りが満ちていた。

不機嫌そうなラディック、張り詰めた表情のアニエス、淡々としたウリエルがソファーに座った。

「ウリエル、皆を集めてもらって悪いね。実は、エテ棟のベルナールが居ないようなんだ。誰か、彼を見かけなかったかい?」

「見てないわ。帰ったんじゃない?」

「オレは酔っぱらって寝ちまってたから、物音すら気づかなかったな。」

「わたくしどもは、昨日広間でお会いしたのが最後ですね。」

三者が三者らしい答えをする。想定の範囲内だ。

「車も用意されていないのに、帰ったりしないんじゃないか?」と抵抗すると、

「迎えを呼んだんじゃない?」とアニエスが面倒くさそうに答えた。

「表を見に行きましょうか。」

ウリエルの誘導で、皆が玄関へ向かう。外から門扉のところまで足跡も車輪の跡はないが、昨夜からの吹雪で覆われたせいもある。ここからベルナールが出たとすれば、夜中か?

「夜中に出ていかれたのかもしれませんね。」

よくもまぁ、堂々と言ってのけるな、ウリエル。私たちに手紙を出したのはお前じゃないのか?おそらくどこかで翡翠の噂を聞きつけ、廃墟と化していたこの館を買い取ったのだろう。そして20年前の出来事を知り、私たちから翡翠の在り処を聞き出そうとしているに違いない。そう簡単に計画に乗ってたまるか。ベルナールもどこかで捕まっている可能性もあるな。用心しておこう。

「お騒がせしてすみませんね、皆さん。ベルナール君は先に帰ったのかもしれないね。」私は一旦引き下がった。翡翠も探さねばならないしな。


棟に戻ったアニエスは、少し苛立ちながら髪をかきあげた。甘いざくろの香りが零れる。

ベルナールが逃げたのは、仲間割れじゃないの?こちらの様子まで伺って、嫌な男。こっそり逃げ出せば、それぞれの棟まで音は聞こえない。棟は廊下含め50メートルくらいあるし。しかし、ラディック、今日はやたら静かだった。昨日は無駄口を叩いていたのに。

アニエスはまた、イベール棟の非常口から出て、昨日行けなかったオトヌ棟からプランタン棟までの森を歩いてみることにした。雪で昨日より視界が悪い。しばらく進むと、どこからか排気口のニオイがした。数十分かけて十字の上の部分まで到着した。この先は折り返すことになる。プランタン棟の非常口の前、何か黒い物体が見えた。それは黒い丸太のように見えた。近づいた私は心臓をつかまれたような衝撃で、声も出ないまま後ろに倒れ込み尻もちをついた。顔を焼かれた人間が雪に埋もれていた。ベルナールが着ていたシャツを着ている。身体中には無数の焦げ跡があり、身体中が穴だらけになっていた。誰か、誰かを呼ばなくちゃ…。プランタン棟ならラディックが居るだろう。非常口から助けを呼ぼう。その瞬間、アニエスは頭に強い衝撃を感じた。木材をもった誰かが、朦朧とする意識の中でぼんやりと動いている。この香り、甘くなめらかで、人肌を感じさせる、どこかで…。

アニエスは冷たい外壁に向かって倒れた。

※12月27日掲載の次号へ続く


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Author's Profile

美容ジャーナリスト/香りのストーリーテラーYUKIRIN
ナチュラルコスメとフレグランスのエキスパートとして、
「香りで選ぶナチュラルスキンケア」や、「香りとメイクのコーディネート」など提案する他、
香りから着想される短篇小説を連載中。

媒体での執筆・連載の他、
化粧品のディレクション、イベントプロデュース、ブランドコンサルティングなど幅広く活動している。
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