生活そのものが教材
――谷戸は現在、きまった時間割があるのではなく、子どもの主体性に沿った、遊び(=生活)を中心とした保育をされていますが、保育者にとってはなかなかハードルの高い内容なのではないですか。
そうですね。毎日時間割が決まっていたら、それはそれでやりやすいのかもしれませんが、もしかしたら私は、内容について深く考えずに流れ作業になってしまったかもしれません。決まっていないからこそ、毎日子どもたちをよく見て「今どんな遊びに向かっているか」「どういう遊びを仕掛けたら、乗ってきそうか」など、とことん考えて翌日の流れを決めます。大変な部分もあるのですが、挑戦していく楽しさはありますね。
でも、そうやって考えて、遊びのきっかけになるものを準備していても、子どもたちが、こちらが想像しているのとはまったく違った遊び方をしたりということもしょっちゅうです。いい意味で期待が裏切られるというか。
たとえば先日は、「お寿司をつくりたい」というので、ネタになりそうな素材を用意したのですが、子どもたちは回転ずしで回ってくるプリンやジュースが作りたかったみたいで(笑)。でも、「スプーンちょうだい」とは言わず、そこにある紙で上手にスプーンを折っていました。すごいなぁと思って。
――保育の内容について、他の先生との話し合いの中で、ぶつかることもありますか?
ありますよ。去年も同じ学年の先生としょっちゅう喧嘩していました(笑)。といっても、お互いに子どものことを考えて、「こうするほうがいいのでは」という提案をしあっているので、険悪にはなりませんけれど。具体的に何が原因だったのかはもうよく覚えていませんが、どうしても結論が出なくて、議論が平行線をたどるときには、最終的に園長に相談して、ということもあります。