私(ライター・菅原)は5才から12歳までピアノを習っていましたが、どうしても好きになることができず、たいして教本もすすまずに(練習しなかったので当たり前)、辞めました。ピアノの先生はどんなことを考えながら教えているのだろう…? 今月は「 “やろう!”と思うようになるタイミングは一人ひとりちがうので、長い目で見ることを大事にしています」という根岸さんに、ピアノの演奏家として、そして講師としての仕事について聞きました。
進路を決めたのは、中学時代
――今は何人くらいの生徒さんにピアノを教えているのですか。
幼稚園児から中学生まで約20人です。月曜から土曜まで、毎日2~3時間が仕事の時間です。ピアノは、大学在学中から教えていました。
母もピアノを弾いていたので、小さいころから身近に音楽がある環境で育ちました。4才から先生について習い始めましたが、練習は嫌いな子どもでしたね。それなのに発表会などの本番は好きで(笑)。ドレスを着て弾けるし、お客さんから拍手がいただけるのも嬉しかったからです。
ピアノを仕事にしたいと真剣に考えたのは、中学の頃です。勉強をとるのか、ピアノを選ぶのかを考えて、決めるのは今かなと。いい先生に出会えたこともあり、ピアノを選びました。音楽科のある高校を選び、その後音大へ進学しました。
――卒業後は留学されます。
大学時代の夏休みに海外でのセミナーに参加し、そこで「どうしてもこの先生にピアノを習いたい」と思う、ロシア人の先生に出会います。その先生に習いたい一心で、留学に反対だった父親を説得。音大卒業後にウェールズへ留学しました。
留学時代は、音楽が身近にある英国の文化を経験しました。演奏会もたくさんあり、日本よりも手ごろな値段でプロの演奏を聴くことができました。子どもだけでも楽しめる音楽会も開かれていて、小さいころからクラシック音楽に親しむチャンスが多いと感じましたね。
あと、印象的だったのは、ピアノの先生と生徒の関係が、日本では上下関係になりやすいのですが、向こうでは、先生から「ユキヨはこの部分をどう表現したらよいと思う?」と問いかけられる。日常的にディスカッションをする感じでした。問いかけられるので自分でも一生懸命考えて弾く。譜面にフォルテ記号があるからただ強く弾く、というのではなく、どんな感情をこめて弾くのか、を考えるようになりました。