ディーン、君がいた瞬間

「ディーン」といえば、今、連続テレビ小説『あさが来た』に出演している俳優ディーン・フジオカが話題ですが、私の年代以上になると「ディーン」といえば、やはり伝説のハリウッドスター、ジェームズ・ディーンです。今回は、今年で没後60年にも関わらず、なお伝説であり続けるジェームズ・ディーンの死の直前の知られざる物語『ディーン、君がいた瞬間』を紹介します。

その前に、ジェームズ・ディーンを知らない世代のために。“20世紀最大のスター”、“傷ついた青春のアイコン”、“反逆のヒーロー”と数々の称号を持つ彼の主演映画は『エデンの東』（1955）、『理由なき反抗』（1955）、『ジャイアンツ』（1956）のたった3本なのです。類まれなる演技力とカリスマ性で、世界中の人々を魅了した彼ですが、芸歴4年間、主演俳優になって半年足らずの時、24歳の若さで自動車事故で他界。今もなお語り継がれる永遠の存在です。

また、ジェームズ・ディーンの映画といえば、没後50年を記念して製作されたテレビ映画『DEAN/ディーン』（2001）が記憶に新しいです。同作でジェームズ・ディーン役に挑んだのは、ジェームズ・フランコ。本人の生き写しと言われ注目され、その年のゴールデングローブ主演男優賞も獲得しました。

そして、『ディーン、君がいた瞬間』。本作は24歳で夭折したジェームズ・ディーンと、米雑誌『LIFE』などで活躍した写真家デニス・ストックの2週間の旅路を描いた人間ドラマ。これまでのありがちなジェームズ・ディーンの伝記ではなく、その死の直前の一番輝いていた瞬間を捉えています。

本作でジェームズ・ディーン役を演じるのは、デイン・デハーン。何の因果か、ジェームズ・フランコが演じた『スパイダーマン』（2002年サム・ライミ版）のハリー・オズボーン役を、デインも『アメイジング・スパイダーマン2』（2014年マーク・ウェブ版）で演じています。ふたりともイケメンでニヒルな感じなので、オファーされる役が共通しているのでしょうか。（2度あることは3度あるということで、次はジェームズ・フランコが『ラヴレース』（2013）で演じたヒュー・ヘフナー役をデインも演じるのか？…ないか！）

本題に戻りますが、デイン版ジェームズ・ディーン、ジェームズ・フランコ版に負けず劣らず素晴らしいです。定評ある演技は勿論ですが、ナイーブな美しさ、独特のしゃべり方が本人そっくりでした。アントン・コービン監督から熱烈オファーされたデインでしたが、当初憧れのスターを演じることに抵抗があったそう。オファーを受けると、細身のデインは、1950年代の男性特有の体つきになるために、3ヵ月で11キロ以上も体重を増やすといった肉体改造と、毎日約2時間かけて施されたメイクと、あらゆる本やインタビューで徹底的にリサーチして、ジェームズ・ディーンになりきっています。

また、ジェームズ・ディーンのスター性を見出した写真家デニス・ストック役を演じるのは、ロバート・パティンソン。ここ数年で『トワイライト』俳優から、私の敬愛するデヴィッド・クローネンバーグ監督のお気に入り俳優になりました。若手演技派俳優の競演にも注目です。

ジェームズ・ディーンといえば、私が中高生くらいの時に当時日本のリーバイスのCMに出ていて、それがかっこよくて、近所のジーンズショップでモノクロの巨大パネル写真をもらい、今も実家に飾っています。（後で知ったのですが、実は『理由なき反抗』『ジャイアンツ』で彼が履いていたデニムはリーだったそうですが…）。美しいものは時代を越えて残っていきますね。
ジェームズ・ディーンとデニス・ストックの人生だけでなく、時代まで変える写真が、どんな形で誕生するのか…一見の価値ありです！