9月4日(金)から公開となる『ヴィンセントが教えてくれたこと』。
笑いながら、そして泣きながら楽しめる作品として、9月公開映画の中ではCheRishイチオシの作品です。
今回は、監督・脚本・製作を担当したセオドア・メルフィ氏のインタビューをお届けします。
どんな人間にも価値があるんだ
–ヴィンセントととはどのような男性なんでしょうか?
この映画はとある男が友人になった少年を通して自身の価値に気づかされる話だ。
そしてヴィンセントは理解するんだ。今の自分にも、これまでの人生にも意味があったんだと。悪いこともしたけど、いいこともした。みんなの面倒を見た。妻を愛した。国を守った。戦争に従軍して人々を守った――そんな風に考える。
年月を重ねる内に彼の心は厚い殻に覆われてしまった。でも心の奥底では、いい人間なんだよ。それがこの映画で言いたいこと。
「自分は何も成していない、自分の人生は無駄だった」と考えているような、普通の人々を描いた映画なんだ。
この映画はそれに異議を唱える。どんな人間にも価値があるんだとね。
ビル・マーレイこそ惜しみなく自分を捧げられる“聖人”だ
–ビル・マーレイをキャスティングしたのは?
どうしてもビル・マーレイに演じて欲しかった。彼がヴィンセント役にぴったりだと思ったんだ。俳優としての彼をとても好きだったしね。
彼がイエスと言った時、キャスティングは終わったも同然だった。脚本家や監督がビル・マーレイを望むのと同じくらい、俳優たちもビルと共演したいはずだからね。ビルはそういう人さ。
ビルがうなずいたと聞くと、メリッサも脚本を気に入って共演したがった。ナオミやクリス・オダウドも同じだったよ。そうやって、みんなうまく収まったんだ。
–そんなビル・マーレイとの仕事はいかがでしたか?
ビルと一緒に仕事をしていて、彼こそが‘聖人’なんだと気がついたよ。
今まで出会った中で、最も心の広い人物だと思う。
いつでも、誰とでも立ち止まって話をするんだ。街の人々や退役軍人、消防士などと何時間も話をして、写真を撮っていた。この上なく気前のいいスターだよ。
まるで‘聖人’だ。惜しみなく自分を捧げられる。「そんな時間はないよ」なんて言わない。
写真や握手も断わらない。人と出会う機会も同じだ。
面白いかどうかは関係なく、出会いそのものにビルは喜びを感じているんだと思う。
それが彼の人間的な魅力だと思うよ。
ナオミ・ワッツにはまだ知らない面がたくさんあるんだ
–売春婦役でナオミ・ワッツをキャスティングしたのは?
ナオミが演じるダカというキャラクターは、基本的にこの作品のコメディ要素なんだ。
ロシア出身の売春婦で、口が悪く態度も大きいが、すごく生真面目なんだ。
ハーヴェイ・ワインスタイン(製作総指揮)が何度もナオミ・ワッツを薦めてきた。
私は最初、ナオミ・ワッツはすばらしいと思うが、この役は彼女向きじゃないだろうと思った。
簡単な役じゃない。あの役は、コメディ面でこの映画の中心なんだ、と。
すると彼は、自分を信じてくれと何度も繰り返した。そして強引に決めたんだよ。いや、それは冗談だけどね。
とにかく信じてくれと何度も言うから、会いに行ったよ。もともと好きな女優だしね。
彼女に会って、1時間ほどお茶をした。その時、ナオミ・ワッツには、観客や映画業界の知らない面がたくさんあるんだと感じたんだ。
–オリバー役のジェイデン・リーベラー(子役)はいかがでしたか?
ジェイデンは飛び抜けた子だ。人間性の面では、小さなビル・マーレイといったところ。
スタッフや共演者のことを理解し、どう反応すべきかが分かっている。飾らない演技の仕方を知っている。無理をしないんだ。
いつでも落ち着き払って静かにそこにいる。その冷静さは大人もまねできないよ。
『ヴィンセントが教えてくれたこと』
9月4日(金)TOHOシネマズ シャンテ、TOHOシネマズ新宿他全国公開
http://www.vincent.jp
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