ちょっと大作続きだったので、今回は私の好きなジャンル“狂気の男の世界”を描いた映画『ナイトクローラー』を紹介します。①好きな俳優ジェイク・ギレンホール怪演、②アカデミー賞脚本賞ノミネート、③視聴率至上主義のテレビ業界が舞台の作品ということで、私のアンテナは立ちまくりです。
「ナイトクローラー」とは、事件・事故スクープ専門の映像パパラッチのこと。社交性も道徳心もないコソ泥のルイスが、ある晩、事故現場でナイトクローラーと出会い、ネットで勉強した自己流のやり方でのし上がっていく、アンチヒーローのサクセス・ストーリー。良心の呵責を感じない彼の過激な映像はテレビ局に高く売れ、局の要求はどんどんエスカレートしていく…と、なんだか今時でリアルな話です。刺激的な映像を求めて夜のロサンゼルスを徘徊するナイトクローラーの姿を通し、視聴率のために倫理をも踏み外した映像を欲しがるテレビ業界の裏側と、それを非難しながらも求める現代社会の闇に迫っています。
『ボーン・レガシー』(2012)の脚本家として知られるダン・ギルロイがメガホンをとり長編監督デビューを果たした本作は、大作に割り込み、見事全米初登場No.1に輝いています。ちなみにルイスが映像を売り込むテレビ局ディレクターのニーナを演じるレネ・ルッソはギルロイ監督の実嫁です。
そんなギルロイ監督の脚本に感銘を受けて、主人公のルイスを演じたのが、『ブロークバック・マウンテン』(2005)でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたジェイク(個人的は『マイ・ブラザー』(2009)と『プリズナーズ』(2013)の彼が好き)。ギルロイ監督からルイスのイメージを“痩せこけたハイエナ”と例えられたジェイクは撮影前の2ヶ月間で12キロの減量を敢行し、さらに夜通し起きて昼に眠る生活を続け、不気味に出来上がりました。いつもと違い全くイケメンじゃないし、目がいっちゃってます。その甲斐あって、米「タイム」誌でも、“ロバート・デ・ニーロが演じた『タクシードライバー』のトラヴィス再来!”と評価されているほど。
余談ですが、現在全米では、ジェイクが左利きのボクサー(ガリガリからムキムキに華麗に変身!)を演じた新作映画『Southpaw(原題)』が公開中で、その演技も高く評価されています。そして次回作はボストンマラソン爆弾テロ事件を描く映画『Stronger(原題)』で重傷を負った被害者を演じるとも噂されています。これらも楽しみです!
米大手映画レビューサイト「ロッテン・トマト」では、批評家の満足度で脅威の95%を叩き出し、映画史上かつてない“戦慄のハッピーエンド”と話題になっている衝撃作を、この夏に体験してみて。観れば暑さが吹き飛んでヒヤッとしますから!
ナイトクローラー
8月22日(土)ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ他、全国順次ロードショー
http://nightcrawler.gaga.ne.jp
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