CheRish Brun.|チェリッシュブラン

私のごきげんな毎日

太陽の標本

魔法の香り手帖
ラルチザン パフューム ソレイユ ド プロヴァンス オードパルファム

眼下に広がるオレンジブラウンの屋根を眺めながら、街の中心地へ向かって私は石畳の道を歩いた。小径を通り、少し階段を下りる。レンガ造りの外壁が立ち並ぶ中、穏やかな時間を堪能しながら歩を進めていると、ほら、彼らがやってくる。このボルム・レ・ミモザ村を黄色に染めあげる、青々しくパウダリックなミモザの香りだ。風に乗った彼らの分子は、我が物顔で威風堂々と村中を巡り、存在感を強めながら早春を告げて回る。

「春が来るよ!」

香りにいざなわれて向かえば、村のあちらこちらに大きなミモザの樹。ふんわりと黄色い花をたわわに携え、ブーゲンビリアやハイビスカスとカラフルな共演をしている。早春の太陽の美しいきらめきは、まるで柑橘のようにきらきらとミモザの花を輝かせている。

ラルチザン パフューム ソレイユ ド プロヴァンス オードパルファム

いつしか自分の心の中にいつも在る、黒く渦巻くものが薄れるのを感じた。私は清廉潔白な人間を目指してなどいない。皆に好かれたいと思わない。そもそも皆に好かれるなんて、自然の摂理に反しているじゃないか。それでも人は誰しもに愛されたがる。そうして大衆に呑み込まれていくのだ。一部からでもいいから強く支持されるために、自分は強くありたいと願う。

強くあるためには、沢山の武器を持たねばならない。鎧も必要だ。そうやって日々、色々なものと戦っていると強靭なガードで心が覆われていく。しかし、このミモザの綿毛のような香りと、温かな笑顔を感じさせる太陽が、そのガードを緩めていくのだ。剥き出しの心が白日のもとにさらされる。

こうやって人は浄化される。意図的な浄化など、ただの自己満足だろう。自然の香りが、光が、熱が、ゆらぎが、心を溶かす。人はいつか土と風に還ってゆく。それが浄化の最終地点なのだろう。

ミモザの香りが村を駆け巡れば、住人たちの干した白いシーツも、家の番地プレートも、紳士の白いボルサリーノも、テーブルの上のミルクだって、ミモザの香気に染まってゆく。私はまるで、黄色の魔法にかかったようにミモザに見惚れていた。この香りを、一つの小瓶に描くべきだ。私はそう思った。ふわりと肩に乗ったミモザのかけらを、太陽の記憶と共に心に留めた。まるで標本のように。

ラルチザン パフューム ソレイユ ド プロヴァンス オードパルファム

【掲載商品】
■ラルチザン パフューム
「ソレイユ ド プロヴァンス オードパルファム」
各100mL 各¥26,180
ブルーベル・ジャパン株式会社 香水・化粧品事業本部
Tel. 0120-005-130(受付時間 10:00~16:00)
https://www.latelierdesparfums.jp/

美容ジャーナリスト香水ジャーナリストYUKIRIN
ナチュラルコスメとフレグランスのエキスパートとして、
「香りで選ぶナチュラルスキンケア」や、「香りとメイクのコーディネート」など提案する他、香りから着想される短篇小説を連載中。

媒体での執筆・連載の他、化粧品のディレクション、イベントプロデュース、ブランドコンサルティングなど幅広く活動している。
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