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この世界の片隅に

シネマキアート
『この世界の片隅に』

何度でも観たいと思える戦争映画に私は初めて出会いました。今回はアニメ映画『この世界の片隅に』を紹介します。舞台が第二次大戦中の広島ということで、二の足を踏む方もいるかと思いますが、戦時中のある少女の日常がタンタンと描かれていてクスっと笑えるシーンが多く、そして途中からはドンドン物語に引き込まれどんな状況下でも健気に一生懸命生きる少女とその家族の言動に号泣し、ラストはジワジワと優しい気持ちになれる作品です。

この世界の片隅に

昭和19(1944)年、軍港の街・呉にお嫁にやって来た18歳の娘・すずは、見知らぬ土地で健気に毎日の生活を紡いでいく。戦火にさらされ大切なものを失っても、前を向き生活を続けるすずの日々を描く。原作はこうの史代さんの同名漫画。「漫画アクション」連載時から注目を浴び、第13回メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。また「THE BEST MANGA2010 このマンガを読め!」第1位、「ダ・カーポ特別編集 最高の本!2010」マンガ部門第1位も獲得しています。私は映画を観た後に、原作を読みましたが、細かい伏線や夫婦の恋愛感情の経過がわかりやすく描かれていました。映画を通じて、こんな素晴らしい漫画とも出会えて本当に良かった!

この世界の片隅に

主人公すずを演じるのは本作でアニメ映画初主演を果たす、女優・のん(改名前は能年玲奈)ちゃん。やさしく、柔らかく、どこか懐かしい親しみを感じさせる声ですずに生命を吹き込んでいます。(連続テレビ小説「あまちゃん」(2013)同様)少しぼーっとしたところのある、健気でかわいらしい主人公はのんちゃんの専売特許ですね。そのキャラクターとマッチしていることもあり、本業以外の方が声優出演して成功している数少ない作品のひとつだと思います。そして、すずの夫・周作を演じるのは私の大好きな声優・細谷佳正さん。ほかにも小野大輔さん、潘めぐみさんと実力派声優が脇を固めています。

この世界の片隅に

また、この映画は戦争の恐ろしさもきちんと伝えています。空襲、防空壕、原爆が落ちた瞬間の描写もリアリティを追求して描いています。それでも暗いトーンになりすぎないのがこの映画の魅力。「戦争もの」という難しいジャンルを、「大切な家族と一緒に生活をおくることの幸福」という普遍的なテーマで終始貫いています。監督と脚本を担当したのは、片渕須直さん(私の大好きな通称“犬ホームズ”ことテレビアニメ『名探偵ホームズ』(1984-1985)で脚本を担当していたことも!)。監督は6年の歳月をかけて本作を作り上げました。監督曰く「普通の日常生活の機微を描きたいと思っています。『この世界の片隅に』は、戦争が対極にあるので、毎日の生活を平然と送ることのすばらしさが浮き上がってくる。「日常生活」が色濃く見える。ふつうの日常生活を営むことが切実な愛しさで眺められる。これはたしかに自分がチャレンジしてみるべき作品だと強く思いました」。そして、主題歌と音楽を担当したコトリンゴさんの柔らかい歌声も物語を優しく包み込んでいます。

『この世界の片隅に』は、“100年先に伝えたい珠玉のアニメーション”と謳っていますが、本当に長く、深く、多くの人の心に火を灯し続ける作品になると思います。『聲の形』でも書きましたが、やはり名作漫画は実写化せずにアニメ化がいいですね。私は友達はもちろん、友達の子どもにもこの映画を観てもらいたいと思います。

『この世界の片隅に』

この世界の片隅に
ただいま公開中!
http://konosekai.jp/
(C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

フリーランス エディター・ライター國方 麻紀(くにかたまき)
香川・丸亀出身、東京・吉祥寺在住のエディター・ライター。
女性誌『ELLE JAPON』『VOGUE JAPAN』のウェブエディター、ウェブサイト「GLAM」「tend」「BRASH」統括編集長を経て、現在はフリーランスに。好きな映画のジャンルは、バイオレンスや時代劇、B級など。
「このコラムを読んで普段観ないようなジャンルの映画にも興味を持ってもらえたらうれしいです!」
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