CheRish Brun.|チェリッシュブラン

私のごきげんな毎日

女神の記憶

魔法の香り手帖
メログラーノ パフューム

有史以前より存在し、古代ギリシャでは豊壌のシンボルとされていたザクロ。シルクロードを伝い、中国から平安時代の日本へ。秋から冬に実をつけ、寒さに耐性があり、固い皮に覆われた中には、ルビーのような実が詰まっている。

子供の頃、3歳~10歳まで住んでいた家の裏にはザクロの樹があった。実をつけ食べごろになると、はじけるように中から真っ赤な粒が溢れ、両親がそれを食べさせてくれたのを覚えている。少し酸味があったが、私は味よりもその香りと透き通る赤の美しい色味に魅了された。小学生の頃は、叶うことなら、ザクロの実を一粒ずつつなげてネックレスにしたいと思っていたほどだ。

香りに関しても、私の記憶の奥底に存在している。フルーティーだが甘さは控えめで、どこかスパイスのような強さと、ウッディな香りも覚えている。これはザクロの実だけでなく、樹との思い出も影響しているのかもしれない。

10歳の頃、東京に引っ越すことになり、ザクロの樹とはお別れとなった。あれからザクロの樹が身近にあったことは無いし、ザクロの実を丸ごと買ったり食べたりする機会も無い。レストランのデザートに少し散りばめられていたり、酢のドリンクになっているくらいだろうか。私にとって身近で、年に1度のお楽しみだったザクロは、決して万人に身近な存在ではなかったんだと、大人になってから気づいた。

そんなことを考えながら、レルボラリオのザクロのフレグランスを纏う。シャープな柑橘の香りからはじまり、ピンクペッパーがザクロの甘酸っぱさを引き立てる。ラストはザクロの丸い実をイメージしたムスクのやわらかさと、大地に立つ樹木を感じさせる温かみのあるアンバーが残る。私の記憶の中のザクロとは雰囲気は違うが、きっとイタリアのザクロはこんな風景なのかもしれないと思いを馳せる。

確かにあの頃、私とザクロは一緒に過ごしていた。陽に輝くザクロの樹を、窓から小さな私が見上げていた。赤くキラキラと光る粒が今にも溢れ出しそうな丸い実は、まるで女神のように見えた。そんな記憶を持っている自分が、何だか嬉しくなった。

メログラーノ パフューム

【掲載商品】
■レルボラリオ
『メログラーノ パフューム』
50ml ¥8,690
https://www.lerbolario.jp/

美容ジャーナリスト香水ジャーナリストYUKIRIN
ナチュラルコスメとフレグランスのエキスパートとして、
「香りで選ぶナチュラルスキンケア」や、「香りとメイクのコーディネート」など提案する他、香りから着想される短篇小説を連載中。

媒体での執筆・連載の他、化粧品のディレクション、イベントプロデュース、ブランドコンサルティングなど幅広く活動している。
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