CheRish Brun.|チェリッシュブラン

私のごきげんな毎日

桃の香りに想う

魔法の香り手帖
ア フルール ド ペッシュ オードパルファム

果実の香りは、現代香水の多くのフレグランスに使われてきた。樹木、花、ハーブに続き、17世紀後半~18世紀初頭に登場した、アルコールを用いたオーデ コロンにも果実の香りが含まれていたと言われている。

香水に起用されている果実は、色々な種類がある。オレンジやレモン、ベルガモットといった柑橘類、苺やカシスなどのベリー類、フィグ(いちじく)、リンゴ、パイナップル、洋梨、スイカ、そして桃。果皮などから香料が採れるものもあれば、採取できないものもある。桃はエッセンシャルオイルが抽出できない果実の1つだ。皮をむけば、豊かな甘い香りのする果実であるにもかかわらず、エッセンシャルオイルは採取できない。しかし、あの甘く爽やかな生の桃の香りは、纏ってみたい気持ちにもなる。

ところが、桃の香りを使った香水となると、その爽やかさよりも人工的な甘さが際立ち、どちらかと言えば大衆向けの香りになってしまうことが多い。大人がフルーティーノートを品よく纏うためには、きちんと上質なものを見極める必要があると私は思う。そして、ラルチザン パフュームには、素敵なフルーティノートが存在している。

ラルチザンの歴史を振り返れば、果実と共に生まれて歩いてきたと言っても過言ではないだろう。創業者のジャン・ラポルト氏は、バナナの香りを作って欲しいと知人に頼まれ、その後ラルチザン パフュームを立ち上げた。ラルチザン パフュームが1978年に発表した最初のフレグランス「ミュール エ ムスク オードトワレ」は、ブラックベリーにホワイトムスクを大胆に配合したことで、当時センセーショナルを巻き起こし、一躍人気のメゾンに押し上げた。現代も、名香の一つとして挙げられる香りである。

その後、パフューマーであるオリヴィア・ジャコベッティ氏作の「プルミエ フィグエ オードトワレ」は、世界で初めてイチジクの香りを主役にしたフレグランスとして歴史に名を刻み、現在では様々なメゾンやマス向けブランドまでイチジクの香りは存在し、一般化している。果実の香りを上手に活かしてきたブランドであると、改めて認識できる。

今年登場した「ア フルール ド ペッシュ オードパルファム」は、創業者のジャン・ラポルト氏が手がける “パフューマー ガーデン” へのオマージュでもあるそうだ。 “パフューマーガーデン” には、フルーツノートをはじめ、20ものパビリオンが立ち並び、香料を抽出する植物とエッセンシャルオイルの世界を紹介している。さらに、彼は大きな果樹園も所有しており、そこではピーチも栽培されていたという。創業者の精神を守ったと言える今作「ア フルール ド ペッシュ」は、シプレノートとピーチという意外性のある組み合わせ。シプレノートは、ラルチザン パフュームにはあまりなじみのない香調であり、新しい挑戦でもあると感じた。

フルーティなピーチに、ソルティな香りが組み合わされ、みずみずしさをより高めている。トップノートは、ピーチのジューシーな果肉を表現。ベルガモットにピンクペッパーが黄色い果肉を想起させ、ローズウッドが調和する。ミドルノートには、ローズやジャスミンのフローラルノート、ソルティなニュアンスを醸し出す香料カロンが加わり、ラストノートには、パチョリや、ビターアーモンドを思い出すようなトンカビーンにより、果皮とウッディな種を彷彿させる。

新しい香りなのに、どこか懐かしさを感じるのは何故だろう。それは、人々の記憶のどこかに、桃の香りが存在するからかもしれない。でも、ただ桃の香りを纏うのとは違う。モダンで洗練されたピーチ。季節を問わず、纏う人自身も、その香りに触れる人たちの心も、明るく照らしてくれるだろう。

ア フルール ド ペッシュ オードパルファム

【掲載商品】
■ラルチザン パフューム
『ア フルール ド ペッシュ オードパルファム』
100ml ¥26,180
ブルーベル・ジャパン株式会社 香水・化粧品事業本部
Tel. 0120-005-130(受付時間 10:00~16:00)
https://www.latelierdesparfums.jp/

美容ジャーナリスト香水ジャーナリストYUKIRIN
ナチュラルコスメとフレグランスのエキスパートとして、
「香りで選ぶナチュラルスキンケア」や、「香りとメイクのコーディネート」など提案する他、香りから着想される短篇小説を連載中。

媒体での執筆・連載の他、化粧品のディレクション、イベントプロデュース、ブランドコンサルティングなど幅広く活動している。
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