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教授のおかしな妄想殺人

シネマキアート
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御歳80にして年1のペースで精力的に映画を制作しているウディ・アレン巨匠。今回は、「人生における不条理さと滑稽さ」という監督の独特の哲学がつまった奇想天外なダーク・コメディ『教授のおかしな妄想殺人』を紹介したいと思います。前作『マジック・イン・ムーンライト』(2015)でも監督の魅力に触れましたが、本作でもウィットに富んだ脚本とおしゃれな音楽&衣裳は健在で、私を心地よくエンディングまで持って行ってくれました。

米東部の大学に赴任してきた哲学科教授エイブ(ホアキン・フェニックス)は、仕事にも恋愛にも身が入らず、慢性的に孤独な無気力人間になっていた。ある日、悪徳判事の噂を耳にしたエイブは、自らの手で判事を殺害する完全犯罪をひらめく。すると、奇妙な“生きがい”を発見したエイブはたちまち身も心も絶好調となり、憂鬱だった暗黒の日常が鮮やかに色めき出す。一方、エイブに好意を抱く教え子ジル(エマ・ストーン)は、彼がおかしな妄想殺人を企てているとは知らず、恋心を燃え上がらせていくのだが…。

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前作同様、本作でもエマはキラキラとしたヒロインを務めています。うん、文句なく可愛いです。そして、何といっても本作の見どころは、ウディ・アレン監督と初タッグを組んだホアキンが醸し出す、気だるげなセクシーさでしょう。スパイク・ジョーンズ監督作『her/世界でひとつの彼女』(2014)、ポール・トーマス・アンダーソン監督作『インヒアレント・ヴァイス』(2015)でもそうでしたが、悲哀をまとった、ひょうひょうとした演技で、今、彼の右に出る者はいないんじゃないかと思います。役作りで体重を15キロも増やし、生きる意味を探す主人公を存在感たっぷりに演じているホアキン。彼自身もセクシーなのに、こんな母性本能をくすぐられる変人の役なんて、そりゃヒロイン同様、女性は夢中になっちゃいますね。

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次回のウディ・アレン監督作品は、ジェシー・アイゼンバーグ、クリステン・スチュワート、ブレイク・ライブリーらが出演する1930年代の黄金期のハリウッドを舞台に描いた『Cafe Society(原題)』。フランスでは、先月開催されたカンヌ国際映画祭の開幕上映と同時に劇場公開されていますが、日本でも早く公開してほしいものです。また、Amazon配信用に初のTVドラマを手掛けることも明らかになり、エレイン・メイとマイリー・サイラスの出演も決定しています。本当にバイタリティーある人です。監督にとっては、きっと映画制作が“生きがい”なんでしょうね。

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真面目に描けば、重苦しくなりかねないダークな物語に、ふんわりと恋のスパイスをふりかけて心浮き立つユーモアを満喫させてくれる『教授のおかしな妄想殺人』。また『おいしい生活』(2001)や『マッチポイント』(2006)を彷彿とさせる先の読めない展開で、あっと驚く結末も楽しみにご覧ください。

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教授のおかしな妄想殺人
6月11日(土)丸の内ピカデリー&新宿ピカデリー&Bunkamuraル・シネマ&シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー
http://kyoju-mousou.com/
(C) 2015 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.

フリーランス エディター・ライター國方 麻紀(くにかたまき)
香川・丸亀出身、東京・吉祥寺在住のエディター・ライター。
女性誌『ELLE JAPON』『VOGUE JAPAN』のウェブエディター、ウェブサイト「GLAM」「tend」「BRASH」統括編集長を経て、現在はフリーランスに。好きな映画のジャンルは、バイオレンスや時代劇、B級など。
「このコラムを読んで普段観ないようなジャンルの映画にも興味を持ってもらえたらうれしいです!」
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