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私のごきげんな毎日

ラ・ラ・ランド

シネマキアート
ラ・ラ・ランド

はい、間違いなく今年ナンバー1です! 現在32歳のデイミアン・チャゼル監督が、新作『ラ・ラ・ランド』でまたもやってくれました!! 前作『セッション』のラスト約10分間のジャズ演奏では興奮して放心状態になりましたが、本作もラストに驚愕のクライマックスが! もう涙が止まらず、前作同様、高揚した気持ちを誰かに伝えずにはいられなくなりました。ちなみに“ラ・ラ・ランド”とは、(1)ロサンゼルス、主にハリウッド地域の愛称(2)陶酔し、ハイになる状態(3)夢の国、というの3つの意味。チャゼル監督の思惑通りに、私は本作の世界観にどっぷりと陶酔しました。

エマ・ストーン

物語の舞台となるは、夢を叶えたい人々が集まる街、ロサンゼルス。映画スタジオのカフェで働くミア(エマ・ストーン)は女優を目指していたが、何度オーディションを受けても落ちてばかり。ある日、ミアは場末の店で、あるピアニストの演奏に魅せられる。彼の名はセバスチャン[通称セブ](ライアン・ゴズリング)、いつか自分の店を持ち、大好きなジャズを思う存分演奏したいと願っていた。やがてふたりは恋に落ち、互いの夢を応援し合う。しかし、セブが店の資金作りのために入ったバンドが成功したことから、ふたりの心はすれ違っていく……。

ライアン・ゴズリング

前回のコラムでは、若き天才映画監督グザヴィエ・ドランの新作『たかが世界の終わり』を紹介しましたが、彼と双璧をなすのがチャゼル監督だと私は思います。彼が新たに作り出したのは、歌・音楽・ダンス・物語すべてがオリジナルにして、古き良きハリウッド映画を彷彿させる、ゴージャスなミュージカル映画。この鮮やかでどこか懐かしい映像世界で、一度聞いたら耳から離れないメロディアスな楽曲に乗せて繰り広げられるリアルで切ない現代のロマンス。

ラ・ラ・ランド

ミュージカル映画『雨に唄えば』(1952)『シェルブールの雨傘』(1964)『ロシュフォールの恋人たち』(1967)などにオマージュを込めて本作を描いたチャゼル監督は、人々が疲れ切っている現代社会に、夢とロマンのエネルギーを注ぎ込むような、壮大なテクニカラーのミュージカル映画を作りたかったのだとか。まずは映画冒頭の高速道路で繰り広げられる圧巻のオープニング・ナンバーをご覧ください。ワンテイク(!)で撮影している、カラフルで美しい映像にすぐさま心を奪われ、踊りたくなるはずです!

また、私の大好きな映画『ラブ・アゲイン』(2011)のふたりライアン・ゴズリングとエマ・ストーンが3度目の共演を果たした本作。完璧なピアニスト役を演じるにあたり、ライアンは3ヶ月間ジャズピアノを猛特訓し、本作でのピアノの演奏シーンはすべてライアン本人が弾いているそう。手元のクローズアップですら代役ナシというから驚きです! エマはブロードウェイ・ミュージカル出演の経験を生かし、歌とダンスで感情の波を表現し、どんな女性でも共感できる見事な演技を披露しています。また、ふたりでなんと計100回衣装チェンジしていることにも注目! ロマンスの初期段階を黄色のドレスで表し、その後の物語の展開やふたりの感情の変化を見事に衣装で表現しています。

「全くのオリジナルでこの素晴らしさ! この傑作を前に僕らはみんな絶望的な気持ち」と語るのは名優トム・ハンクス。先月授賞式が行われた第74回ゴールデン・グローブ賞では、作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞などノミネートされた全7部門を制し、同賞史上最多受賞を達成。そして、昨日発表された第89回アカデミー賞では、監督賞、主演女優賞、撮影賞、美術賞、作曲賞、主題歌賞の6部門受賞し、本年度アカデミー賞最多の受賞記録となりました。

ラ・ラ・ランド

が、作品賞発表時の前代未聞の事件が発生! 一度は作品賞として『ラ・ラ・ランド』が読み上げられ、スタッフ&キャストが登壇し受賞スピーチをしている最中に、なんと作品賞を受賞したのは『ムーンライト』(3月31日公開)だと訂正され、苦い結末に。ただ、パプニングにざわついているステージ後方では、チャゼル監督が『ムーンライト』に出演し助演男優賞を受賞したマハーシャラ・アリを祝福ハグしている美しい画が。なお32歳のチャゼル監督の受賞は、1931年『スキピイ』でノーマン・タウログ監督が受賞してから85年間破られていなかった記録を破り史上最年少受賞となりました!

ミュージカル映画が苦手という方もいるかもしれませんが、本作は全編ミュージカルというわけではなく、人間ドラマとエンターテイメントとのバランスが秀逸なので、抵抗なくこの世界観に入っていけると思います。この最後のライアンの笑顔が本当にもう〜〜〜! 映画史に残るベストスマイルです!! 何を意味しているかは、ぜひ劇場でご確認ください。「映画って素晴らしい」という喜びで満たされる極上の体験ができますよ。

ラ・ラ・ランド
2月24日(金)TOHOシネマズ みゆき座ほか全国ロードショー
http://gaga.ne.jp/lalaland/
© 2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
Photo credit: EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND.Photo courtesy of Lionsgate.

フリーランス エディター・ライター國方 麻紀(くにかたまき)
香川・丸亀出身、東京・吉祥寺在住のエディター・ライター。
女性誌『ELLE JAPON』『VOGUE JAPAN』のウェブエディター、ウェブサイト「GLAM」「tend」「BRASH」統括編集長を経て、現在はフリーランスに。好きな映画のジャンルは、バイオレンスや時代劇、B級など。
「このコラムを読んで普段観ないようなジャンルの映画にも興味を持ってもらえたらうれしいです!」
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