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【MOVIE】ヴィンセントが教えてくれたこと

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その哀愁漂う雰囲気で母性本能をくすぐる男ビル・マーレイの最新作『ヴィンセントが教えてくれたこと』に、私は号泣してしまいました。“偏屈オヤジと青少年のヒューマンドラマ”というベタなジャンルではありますが、私はこれが大好物です。『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』(1996)や『グラン・トリノ』(2009)、今夏では『バケモノの子』など、名作揃いのこのジャンルですが、本作は普遍的なテーマに現代社会のリアルな問題点を盛り込み、それをセンチメンタル過ぎずに描いているバランスが秀逸なのです。

アルコールとギャンブルに溺れる偏屈オヤジのヴィンセントは、ひょんなことからお隣に引っ越して来た、いじめられっ子オリバーの面倒を見ることに。小学生相手に容赦なく毒舌を連発し、ろくでもないことを教え込んでいくが、二人の間にはいつしか奇妙な友情が芽生え…。と、王道のハートウォーミングなストーリーなのですが、ヴィンセントをビルが演じることで、ただの“お涙頂戴ドラマ”にならずに、ユーモアと人間味がプラスされ、気持ちよく笑って泣けるのです。

昨年トロント国際映画祭で本作のワールド・プレミアが行われると、ビルは「キャリアで最高の演技だ」と絶賛され、本年度のゴールデン・グローブ賞の作品賞と主演男優賞にWノミネート。全米では4館から公開スタートするも、幅広い観客層の共感を誘い、最終的には2500館に拡大し、スマッシュヒットを記録しています。

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ビルといえば、私と同年代の方なら『ゴーストバスターズ』(1984)、若い方なら『ロスト・イン・トランスレーション』(2003)でご存知の性格俳優。近年では、ウェス・アンダーソン、ソフィア・コッポラ、ジム・ジャームッシュなど、独特の世界観を持つ監督の作品に引っ張りだこです。私はその中でも『ブロークン・フラワーズ』(2005)のビルが堪らなく好きなのですが。本作同様、愛すべきダメ人間を飄々と演じたら、現在、彼の右に出る者はいないでしょう。また、私は俳優がHimself(本人役)で出演している作品が好きなのですが、ビルも『コーヒー&シガレッツ』(2003)や『ゾンビランド』(2009)などに本人役でしれっと登場していて、そういうオファーを受けるノリも素敵です。(余談ですが、最近では『テッド2』でトム・ブレイディが本人役で登場していたのに爆笑しました。どうせなら、嫁のジゼル・ブンチェンも一緒に出ればよかったのに…。)

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また、脇を固めるキャストも魅力的です。オリバー役のジェイデン・リーベラーは、12歳にしてビル相手に堂々たる掛け合いを披露。普段ビルは「子役は全部撃ち殺せばいい」と毒づいているらしいのですが、「ジェイデンは本物の俳優だった」と再共演を熱望しているそう。私の記憶に残っている名子役といえば、レオナルド・ディカプリオ、ナタリー・ポートマン、ジェイミー・ベル、ニコラス・ホルト、アビゲイル・ブレスリン、クロエ・グレース・モレッツですが、ジェイデンも私の子役殿堂に入れたいと思うほど素晴らしいです。どの子役も大成しているので、今後の彼の活躍も楽しみ!

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女優陣もいいメンツが揃っています。ナオミ・ワッツはいつものナチュラルなセクシーとは違い、妊婦ストリッパーをこってりエロく演じ、新たな一面を見せています。また、オリバーの母親を演じたメリッサ・マッカーシーも得意のコメディ調ではなく、悩めるシングルマザーを熱演。メリッサは日本人にはあまり馴染みがないかもしれませんが、今年度の女優ギャラランキングで、ジェニファー・ローレンス、スカーレット・ヨハンソンに次いで、堂々3位の約28億円稼いだ女優です。来年公開予定の女性キャストでリメイクされる『ゴーストバスターズ』にも出演するのですが、先頃なんと、同作にビルのカメオ出演(感謝感激!)も決定し、これは期待せずにはいられません。

生きることの価値を見失った男が、少年との友情を通して、もう一度生きる力を取り戻していく本作。実は皆何かしらの問題を抱えていて、孤独を感じて生きているものなんですよね。どんな人間も生き方も肯定してくれる本作を観れば、きっと優しくポジティブな気持ちになれますよ。

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ヴィンセントが教えてくれたこと
9月4日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
(C)2014 St. V Films 2013 LLC. All Rights Reserved.
http://www.vincent.jp

著者プロフィール

國方 麻紀(くにかたまき)
國方 麻紀(くにかたまき)エディター・ライター
香川・丸亀出身、東京・吉祥寺在住のアラフォーのエディター・ライター。
女性誌『ELLE JAPON』『VOGUE JAPAN』のウェブ・エディターを経て、現在はフリーに。
好きな映画のジャンルは、バイオレンスや時代劇、B級など。
「このコラムを読んで普段観ないようなジャンルの映画にも興味を持ってもらえたらうれしいです!」

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