銀座三越の裏手。
東京のど真ん中に、日本の野山を感じられる場所があります。
それは、「野の花 司」という、野草・茶花の専門店。
畑や温室で栽培された花にはない、曲がっていたり、かぼそかったりする野の花ばかりが集められた店内は、どこかほっとする優しい空気が流れています。
園芸種や西洋種の花に慣れ親しんだ私たちにとっては、逆に新鮮で、忘れてしまっていた「自然」を思い出させてくれるよう。
私は、ある日偶然、「野の花 司」に出会いました。
お世話になっている方が愛猫を亡くされたとき、せめてもの慰めになればとお供えする花を探していたのです。華やかな花たちとは違う野の花の優しさ、仏花とも違う自然を感じられるたたずまいが、猫の旅立ちに相応しい気がしました。
「野の花 司」は、薔薇のない花屋です。
北は岩手、南は熊本から、野山の花が入荷しているそう。
ときには、店頭に珍しい食用の山菜や野草も並んでいます。
季節のものしか入荷しないという「野の花 司」の店内は、時期的には色が少なく、寂しく感じることがあるかもしれません。でも、それも自然のことです。
現代人にとっては、名も知らぬ、見たこともない草花が銀座で売られている。
こんな不思議で、粋な光景があるでしょうか。
その向こうには、田舎や日本人の心があるような気がするのです。
「野の花 司」では、野花を使ったアレンジメント、花束、寄せ植えが手に入ります。
これらは、店頭だけでなく、ネットオーダーも可能。
また、最近は、盆栽を買い求める外国人も多いようです。
一般的な生花店にはない、わびさび、日本ならではの美しさは外国の方々も魅了するのかもしれませんね。
また、「野の花 司」の2階には、茶房とギャラリーがあります。
茶房では、自然の食材を活かしたランチや自家製デザートを提供。
そのメニューも、素朴で温かさが感じられるものです。
茶房では、山菜を使った佃煮なども販売されていました。
併設のギャラリーでは、季節に合わせた作品の展示、即売がされています。
私が訪れたときは、藤の花が甘やかで清々しい香りを放っていました。
藤の花の香りの良さに驚かされると共に、小学校の藤棚の記憶がよみがえった瞬間。
「野の花 司」には、日々の慌しさに疲れた私たちの心を癒してくれる野花が溢れています。
ともすれば、見逃してしまいそうな野花には、幼き頃、道で摘んだ花を思い出します。
それは、いつもは伝えられない気持ちを代弁してくれるはず。
母の日の贈り物としても、オススメしたいです。
■店舗情報
野の花 司
[住所] 〒104-0061 東京都中央区銀座3-7-21
[お問い合わせ] TEL 03-3535-6929/FAX 03-3535-6930
[営業時間]10:00~19:00/日曜・祭日11:00~18:00
http://www.nonohana-tsukasa.com/