イギリスの文化人類学者、エドワード・タイラー氏が著書内で初めて提唱したと言われる「アニミズム」という言葉。ラテン語のanima=霊魂から由来し、生物や無機物を問わず、全てのものに魂が宿っているという考え方である。
日本にも”八百万の神”という、世の中のすべてものに神が宿っているという考え方があり、アミニズムと通ずるものがある。世界各国でも、名称は違うがアニミズムと共通した側面を持つ信仰や儀式が存在している。
私が、創業者インタビューで初めてコミュニケーションをとった台湾のフレグランスブランド「P.Seven茶香水」は、今年飛躍的にその認知が拡大したブランドの1つではないだろうか。お茶を淹れた茶器「聞香杯」の香りを試すという台湾の文化をベースに、その香りをいつまでも残したいという想いから創られた香水が展開されている。お茶の香りのシリーズも人気だが、『ANIMISM 泛靈 オードトワレ』もとても良い香りだと思う。
この香りは、自然崇拝のアニミズム文化からインスピレーションを受けて創られたという。山、海、大地、太古より人々が生きてきた土地で、狩りをし、種をまき、そのすべてに魂が宿っている神秘的な儀式。いきいきと巡る血は勢いを増し、山山椒、檜、龍涎香を取り巻いていく。現代に時を移しても、魂は変わらない。コンクリートの間を行き交う風のように、スピードに乗って次の獲物を探して行く。彼女の胸元には、瑠璃色のビンロウの花が咲き幸運をもたらす…そんなストーリーが込められている。ビンロウの花と葉の香りに、月桃が大地を感じさせ、ハーバルで涼やか。スッとリセットしてくれるようなシャープさやスピード感もある。
この香りをきっかけにアニミズムに考えてみた時、私はふと、すべての物に魂が宿っているのであれば、香水にも魂が宿っているのだろうかと思った。創業者や調香師たちの想い、ボトルやボックスのデザイナーやラベルのデザイン。1本の形をもって、香水は完全体である。完全な香水には魂が宿っているように感じた。1つ1つの魂を大切に、私たちはエナジーをいただいている。だからこそ、その完全体に尊敬の意を持って、大切にしたい。決して、人の褌で相撲を取ってはいけないのだ。
本当に万物に魂があるとすれば、本当は生きにくい世界になるだろう。良心が痛むことも増えてしまいそうだ。しかしながら、すべてに魂があるならば、すべてに感謝して、自分が生きている今日に感謝できるのではないか。香水や香料となる植物に感謝し、香水を大切に愛すことができるだろう。これからも美しい世界が保たれるように、美しい香水がもっと創られていくように、私自身が毎日を丁寧に生きていきたいと思う。その想いを持てることこそが、アニミズムの本質なのかもしれない。
【掲載商品】
■P.Seven茶香水
『ANIMISM 泛靈 アニミズム オードトワレ』
10ml ¥9,860
https://psevenjp.official.ec/items/72126990