今年1月27日に発売された高山なおみさんの最新刊、『帰ってきた日々ごはん⑩』。
2002年にスタートした日記エッセイ「日々ごはん」シリーズは累計20万部を超え、さらに、2022年にはスタートから20年を迎えました。
CheRish Brun.では、高山なおみさんへのインタビューを交えながら、最新刊『帰ってきた日々ごはん⑩』、そして、「日々ごはん」シリーズをご紹介します。春を楽しむ読書タイムにいかがですか。
料理家、文筆家。
帰ってきた日々ごはん⑩
『帰ってきた日々ごはん⑩』では、2018年7月から12月の日記が収録。
2016年に移り住んだ神戸の土地や人との馴染み、暮らしのリズムができて、ぐんぐんと活動が始まる日々が綴られています。
高山なおみさんの日常ごはんの記録や出来事、風景などを収めた恒例の「アルバムページ」。日記を読みながら「この料理はこんな感じかな……」「これはあんな感じかな……」と思いをはせていた料理の、まるで答え合わせのようなページです。
こちらも恒例、おまけレシピ。
- 7月 ハモの照り焼き
- 8月 皮をむいた茄子のフライ
- 9月 ポークソテー
- 10月 蓮根つくね
- 11月 トマト鍋
- 12月 白菜入りチャーハン
6品が掲載されています。
書くことも、絵本を作ることも、生きることも。
毎日ごはんを作っているんだけど、食べたいものを作って、おいしく出来ない日もある。すごくいっぱい食べてしまう日、それで夜におなかが張っているなあとか、次の日の朝ごはんはパンをやめておこうかなとか、気持ちにも体にも関係している。
そういう全部が料理だなって思います。
そして「日々ごはん」シリーズといえば、毎回、目を引く装丁。『帰ってきた日々ごはん⑩』の装丁は、高山なおみさんと画家の中野真典さんが交わしていた「言葉」と「絵」の交換絵日記から生まれた作品が使用されています。
それから、『帰ってきた日々ごはん』の5巻も「日々ごはん」らしいですね。麺がのびているし、お鍋がへこんでいるし、こういう写真の表紙をみなさんにお届けして大丈夫かな、と最初は葛藤がありました。本になってみたら、なんだか清らかに見えました。おいしそうだし。
高山なおみさん
「帰ってきた日々ごはん⑩」
刊行&日々ごはんシリーズ20周年 特集ページ
https://www.anonima-studio.com/hibigohan-20th-anniv/
20年目を迎えた「日々ごはんシリーズ」
2002年に『日々ごはん①』からスタートした「日々ごはん」シリーズは現在22巻、シリーズ累計20万部越えました。
高山なおみさんファンはもちろん、幅広い読者から支持されている日記エッセイは、日記なので、何巻からでも読み始めることができ、自由に楽しめるのが大きな魅力です。
『日々ごはん』は……生きていること。生きている私、です。
『日々ごはん』は12巻で一度お休みしています。そのときは、本を読んでくださる方の本棚が『日々ごはん』でいっぱいになるのが申し訳ないな、という気持ちがあったんです。
その気持ちは今もまったくないわけではないのですが、生き続けているものなんだから仕方ないな、と思うようになりました。
日記を書くことが体に沁み込んでいて、当然のようになっています。日記を書けない日ももちろんありますが、それでいいと思っています。いつも3年後くらいに本になるのです
が、文字組された原稿を読み返していると、その日のことが蘇ってくる。日記に書けなかったことも、ありありと。自分の日記だし、自分のことなんですけど、時間がたつことで、高いところから眺めているような感じ。『日々ごはん』が今のわたしを作ってくれている、と感じます。
自分の体から発する言葉に責任を感じているし、覚悟ももっています。それが楽しみに繋がっている、と感じています。
あわせて読みたい高山なおみさんの著書
新聞や雑誌などで多くの連載を持つ高山なおみさん。ご著書は「日々ごはん」シリーズのみならず、料理書、料理エッセイ、絵本など多岐にわたります。
『チクタク食堂(上)』
高山なおみさんが、家でのごはんを写真とメモで全て記録した、とてつもない一冊ができました。すべてありのままに記された食卓は、インスタントを食べる日だってあるし、変な組み合わせの日も、体調が悪くてつくれない日もある。でも、日々のごはんは毎日続き、高山さんは毎日記録をつづけます。おいしくできた料理には「作り方メモ」をつけ、季節の保存食の作り方も掲載。日記エッセイ『日々ごはん』6、7巻にも対応。
『チクタク食堂(下)』
高山なおみさんによる、一年分の壮大な家での食卓記録、下巻。7月から翌年1月まで半年分の写真とメモに、おいしくできた料理には「作り方メモ」つき。体調不良の日も、出前のお寿司の日も、残り物の使いまわしも、そのままに載っています。今日の献立の参考として気ままにめくっても、じっくり読みこんで想像を膨らませても味わえます。下巻にはお正月料理の作り方も掲載。日記エッセイ『日々ごはん』7、8巻にも対応しています。
『本と体』
自他ともに認める読書家の高山さんは食べるように本を読みます。2016年~2017年に掲載された読売新聞の本の連載を中心にした26冊の感想文と、「ことば」をめぐる対談3本(2019年に実施)を収録した、「本」と「ことば」をじっくりと深めて感じる一冊です。紹介される本は、その日、その時に著者に響いた本。そのほか、絵本編集者(筒井大介氏)、写真家(齋藤陽道氏)、画家(中野真典氏)と著者の対談を収録している。
近年は絵本や料理本の制作や、暮らしぶりがテレビで紹介されて話題になりました。
あらためて「帰ってきた日々ごはん⑩」
『帰ってきた日々ごはん⑩』を読みながら「暮らしって愛おしいな」と改めて思いました。
『帰ってきた日々ごはん⑩』を読んでいると、ゆらゆらとシーツのスクリーンに映し出されるかのように、高山なおみさんの暮らしをぼんやりと想像してしまいます。実際には大変だと思いつつも、「坂の上にある家ってなんだか良いな」と思ったり、海を見渡せる部屋を想像してみたり、「私も旬の食材を使ってシンプルにお料理がしたいな」と思ったり。
そのうち、自分がしている、暮らしの1つ1つの動作がとても愛おしく思えてきました。
紅茶を飲むためのお湯を沸かすこと、お気に入りのお皿に料理を盛り付けること、洗濯物をたたむことさえも。そして、誰かのためではなく自分のために日記を書きはじめようかな……とさえも。
インタビュー協力:村上妃佐子(アノニマ・スタジオ)