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私のごきげんな毎日を送るライフスタイルマガジン

運び屋

シネマキアート

御歳88のクリント・イーストウッドが、『グラン・トリノ』(2009)以来、10年ぶりに監督と主演を兼任した「運び屋』。「今のハリウッドには自分が演じられる作品がない」と、一時は俳優引退もほのめかしたこともある名優の心を動かしたのは、前代未聞の”アウトロー”の実話でした。御大は90歳の“伝説の運び屋”を、ときに淡々とユーモアを交えながら、ときにホロリ哀愁を漂わせながら、人生の機微に触れて演じています。

退役軍人のアール・ストーン(クリント・イーストウッド)は、家庭をかえりみず、百合の生産者として仕事に打ち込む毎日。それから数十年後、90歳になろうとするアールには金もなく、ないがしろにした家族からも見放され、孤独な日々を送っていた。ある日、男から「車の運転さえすれば金になる」と持ちかけられる。なんなく仕事をこなすが、それはメキシコ犯罪組織によるドラッグの運び屋だった。気ままな安全運転で大量のドラッグを運び出し、多額の報酬を得るが、麻薬取締局の捜査官コリン・ベイツ(ブラッドリー・クーパー)の手が迫る……。

アールのモデルとなったのは、実際にドラッグの運び屋を務め2011年に87歳という高齢で逮捕された男レオ・シャープ。イーストウッド曰く「『ニューヨーク・タイムズ』で、アールのある意味で原型となった実在の人物に関する記事を読んだんだ。あの年齢、つまり私の年齢の設定で展開させてみると楽しいだろうなと思ったんだよ」。その期待に応えたのは、『グラン・トリノ』でも彼とタッグを組んだ脚本家ニック・シェンク。「ニックは、たとえ年配の男であっても、つねに何かを学んでいるキャラクターを書くのがとてもうまい」と、イーストウッドはシェンクが創り出した世界を高く評価しています。

キャストも実力派が脇を固めています。次第にアールを追い詰めていく捜査官役には、イーストウッド監督作『アメリカン・スナイパー』(2014)でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされ、自身の初監督作『アリー/スター誕生』の評価も高いブラッドリー・クーパー。イーストウッドと再び組めて、かつ共演できるということで二つ返事で出演を決めたとか。

またアールの娘役には、実の娘であるアリソン・イーストウッド。彼女は7歳の時、父が主演した『ブロンコ・ビリー』(1980)で映画初出演し、再び父の主演作『タイトロープ』(1984)で本格デビューしました。父からの共演オファーに当初驚いたものの「大人として父と共演するのはこれが初めてで、なんだか魔法みたいだった。父と共有できる貴重な経験になった」と語っています。そして、メキシコのカルテルのボス役には、『ゴッドファーザー PARTIII』(1990)でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたアンディ・ガルシア。円熟味のあるこの方がボス役と聞くと、世代的に堪りません!

90歳の老人はなぜ危険な運び屋になり、どうやって一度に13億円相当のドラッグを運んだのか? 麻薬取締局の捜査網をかいくぐり、最後まで逃げ切れることができるのか? 衝撃の真実とその行方を劇場でご覧ください。

『運び屋』
3月8日(金)全国ロードショー
http://wwws.warnerbros.co.jp/hakobiyamovie/
(C)2018 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

フリーランス エディター・ライター國方 麻紀(くにかたまき)
香川・丸亀出身、東京・吉祥寺在住のエディター・ライター。
女性誌『ELLE JAPON』『VOGUE JAPAN』のウェブエディター、ウェブサイト「GLAM」「tend」「BRASH」統括編集長を経て、現在はフリーランスに。好きな映画のジャンルは、バイオレンスや時代劇、B級など。
「このコラムを読んで普段観ないようなジャンルの映画にも興味を持ってもらえたらうれしいです!」
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