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私のごきげんな毎日

グリーンブック

シネマキアート
グリーンブック

今年最初にご紹介するのは、笑って泣ける実話バディムービー『グリーンブック』。実は昨年末に観たのですが、2018年に観た全作品の中で一番好きな作品です。黒人に対する偏見に満ちているガサツな用心棒、トニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)と孤高の天才黒人ピアニスト、ドクター・ドナルド・シャーリー(マハーシャラ・アリ)のおじさんふたりの珍道中が本当に痛快で、ラストはとても幸せな気分になりました!

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1962年のアメリカ南部。ナイトクラブで用心棒として働く、労働階級のイタリア系アメリカ人トニーは、ナイトクラブが2カ月間改装閉店することなり、その間は富裕層のアフリカ系アメリカ人ピアニスト、ドクターのアメリカ南部ツアーの用心棒兼運転手として雇われます。その旅のガイドとなるのが、アメリカ南部の黒人専用ホテルやレストランが書かれている黒人用旅行ガイド<グリーンブック>。これを頼りに、何もかも正反対のふたりがツアーへ旅立つ……。

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はじめは自分の流儀を譲らず衝突ばかりしていたふたりですが、次第にトニーはドクターが奏でる美しいピアノの音色に魅せられ、ドクターはどんなトラブルも解決するトニーに信頼を寄せ、笑いの絶えない楽しい旅へと変化します。ただその旅路は楽しいことだけではなく、先の読めない恐ろしい場面にも遭遇するなど、当時のアメリカ南部に根強く残る黒人差別の実態もうかがえます。

グリーンブック

そんな実際にあったふたりの友情ストーリーを、愛と敬意を込めて脚本、製作したのはトニーの実息子ニック・バレロンガ。その企画に『ジム・キャリーはMr.ダマー』(1994)『メリーに首ったけ』(1998)などのコメデイの名手ピーター・ファレリーが監督を熱望し、キャリア初の感動作を傑作に昇華させました。そして(私の大好きな2作品!)『ヒストリー・オブ・バイオレンス』(2005)『イースタン・プロミス』(2007)同様、無骨な用心棒を演じたら右に出る者がいないヴィゴは本作では14キロ体重を増加し(でもセクシー!)、『ムーンライト』(2016)でアカデミー賞を受賞したアリは孤独な魂を抱えたアーティストを熱演しています。

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本作の評価は高く、“オスカーに最も近い賞”と言われるトロント映画祭の観客賞を、『ルーム』(2015)、『ラ・ラ・ランド』(2016)、『スリービルボード』(2017)に続いて2018年は本作が受賞。また先日、発表された2019年ゴールデングローブ賞授賞式では、コメディ/ミュージカル部門の作品賞、脚本賞、助演男優賞(アリ)を受賞しました。来月のアカデミー賞での席巻も楽しみです!

全く違う世界に住むふたりの壮大なズレに笑い、南部へツアーに出たドクターの本当の目的に胸を熱くし、生涯続いたふたりの友情ロードムービーを劇場で見届けてください。

『グリーンブック』
3月1日(金)TOHOシネマズ 日比谷他全国ロードショー
https://gaga.ne.jp/greenbook/

フリーランス エディター・ライター國方 麻紀(くにかたまき)
香川・丸亀出身、東京・吉祥寺在住のエディター・ライター。
女性誌『ELLE JAPON』『VOGUE JAPAN』のウェブエディター、ウェブサイト「GLAM」「tend」「BRASH」統括編集長を経て、現在はフリーランスに。好きな映画のジャンルは、バイオレンスや時代劇、B級など。
「このコラムを読んで普段観ないようなジャンルの映画にも興味を持ってもらえたらうれしいです!」
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