久しぶりにラストまで先の読めない映画に出会いました! 娘を殺された母親が3枚の広告看板に、あるメッセージを出したことから巻き起こるクライム・サスペンス『スリー・ビルボード』。
今月発表された第75回ゴールデングローブ賞では作品賞、主演女優賞、助演男優賞、脚本賞の最多主要4部門を受賞、つい一週間前に発表された第90回アカデミー賞では作品賞、主演女優賞、助演男優賞、脚本賞、作曲賞、編集賞の6部門7ノミネートされました。本作は私にとって今年初鑑賞映画だったのですが、素晴らしい脚本とキャストの演技力で、2018年の最高の幕開けとなりました。
米ミズーリ州のさびれた道路に立ち並ぶ3枚の広告看板に、あるメッセージが現れる。それは7カ月前に何者かに娘を殺されたミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)が、一向に進展しない捜査に腹を立てて、警察署長(ウディ・ハレルソン)を批判する広告だった。署長を敬愛する部下(サム・ロックウェル)や町の人々から嫌がらせや抗議を受けても、一歩も引かないミルドレッド。その日を境に、次々と不穏な事件が起こり始め、町に激震が走るなか、思いがけない展開が待ち受ける……。
まず何と言っても、キャストがすごい! 経験豊富な実力&個性派俳優陣の名前が並んでいるだけで、面白くないわけがない!! ミルドレッドに扮するのは、アカデミー賞に過去4度ノミネートされ、『ファーゴ』(1996)で主演女優賞を獲得したフランシス・マクドーマンド。本作ではジャンプスーツとバンダナという“戦闘服”に身を包み、全身で怒りのエネルギーを放射し続ける一方で、娘を守れなかった悲しみと後悔を繊細に表現するなど、さまざまな感情の芯を捉えた演技で観る者を圧倒。脇を固めるのは、愛妻家で良き父で人望厚いが、人生の終止符の打ち方に悩む署長を魅力的に演じたウディ・ハレルソン。
さらに、トラブルメイカーのディクソン巡査役には、『コンフェッション』(2002)でベルリン国際映画祭男優賞を受賞したサム・ロックウェル。人種差別主義者でマザコン、バイオレンスでしか自分を表現できない教養に欠けた男が、ある事件をきっかけに変わっていく姿を味わい深く演じています。3月に授賞式が行われるアカデミー賞では、フランシスが主演女優賞、ウディとサムが助演男優賞にWノミネートとなりました。
そんな彼らを統率するのは、監督・脚本・製作を務めたマーティン・マクドナー。各々の大切なものを守るために、予想もしない道へと外れていく大人たちをダークなユーモアを潜ませて熱く切なく描き、観る者を途方もない結末へと連れ去ります。ここまで最後の最後まで先が読めない映画にはめったに出会えません。物語の行方にドキドキしながら、各キャラクターの生き方に浸って考えてみてください。
スリー・ビルボード
2月1日(木)TOHOシネマズ シャンテ他ロードショー
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