人生を変えた、初めてのフランス旅行
私の人生初めての海外旅行は、もちろんフランス・パリでした。
大学2年生のときで、まだ通貨はユーロでなくフラン。
英語もフランス語もほぼできない状態、初めての海外旅行でひとり旅という、だいぶ怖いもの知らずな感じですね…
それでも、モンマルトル、凱旋門、エッフェル塔、ルーヴル美術館、セーヌ川クルーズ、ノートルダム寺院…とパリを縦横無尽に移動し、限られた時間でめいっぱい観光を楽しみました。
クレジットカードは持っていなかったので両替はトラベラーズチェックで。
スマホどころかインターネットの存在を知らない時代、情報収集はひたすらガイドブック「地球の歩き方」で。
いま思えばあのときの語学力&情報量でよくメトロにも乗れたなあ、と思うのですが、あのときの旅が私の人生を大きく変えたのでした。
旅に出る前からフランスのブランド(アニエス・ベーやA.P.C.)は好きだったし、セルジュ・ゲンスブールの音楽をよく聴いてたし、フランス映画も映画館に観に行ったりビデオレンタルしていたし、フランス語も第二外国語で習っていたのですが、
「ああ、私、この国が大好きだ!」
と確信したのでした。
私はよく「なんでそんなにフランスが好きなんですか?」と聞かれるのですが、物心ついた頃からずっと好きだったので、特にはじまりの瞬間はわかりません。
でもあのときに旅をしていなければ、今の私のフランス偏愛ぶりはなかったと思います。
人生を変えた旅だったのです。
パリの後に他の国も周遊したのですが、たった数日しか過ごしていないパリに望郷感すら抱いたものでした。
すべてが便利になった今、考えること
初めてのフランス旅行から20年超、それから幾度となく旅をしてきました。
はじめての旅行のときとは比にならず、とても便利な時代になりました。
写真も「写ルンです」数個だけで100枚くらいしか撮らなかったのに、今は一眼 & ミラーレス & iPhoneで、一回の旅だけで5,000枚(+動画も)。
インターネットのおかげで、日本にいながらも現地の情報が容易に入手できるようになり、行程もだいぶ増え、飛行機やホテルの予約から美術館の入場チケット購入、なにからなにまでスマホひとつでできるようになりました。
ただ、便利になった一方で、失くしたものもあるのでは…?と、ふと考えてみました。
写真や動画をたくさん撮るようになった分、自分の目で見る時間が少なくなっていることは確かです。
そのために、「写真を撮るために」「ブログのネタのために」「SNSに掲載するために」と、旅をする目的がぶれていないかと不安になることはあります。
私は純粋にフランスという国に恋をしているのです。
それまでもずっとあこがれの存在ではあったけれど、あるときの旅をきっかけに恋に落ち、フランスのことをもっと深く知りたいと思うし、フランスに住みたいと思う。
これって、一人の男性を好きになって、恋をして、この人と一緒に暮らしたい、この人に愛されたい、と思うのと一緒だと思っています。
私はいつも全身全霊の愛を込めて、全力で旅をします。
でも同時に、次の旅のために少しだけ「旅の後悔」を残すこともしていました。
「あの場所に行っておけばよかった、よし、次は絶対に」
「もっと知識を持ってから訪問すればよかった。よし、次は必ず勉強してから行くぞ〜」
というように。
だけど1年前にノートルダム寺院が燃える様子を見て、2度と同じ景色が見られないということもあるのだと痛感しました。
再建したとしても、同じノートルダムができるわけではない。
尖塔がある凛々しい後ろ姿を、もう眺めることができないんだろうな、と。
今年シャンゼリゼで新年のカウントダウンをしたときは、まさかこんな事態になるなんて思いもしなかったこと。
もし事態が収束しても、次回戻れた時は以前と同じ景色が見られるのでしょうか。
日に日に募る不安で、いっぱいになります。
でも、今度フランスへ戻る日の希望を胸に、とにかく生きるしかないと思っています。
生きていれば、可能性はあるのだから。
だから今は、「生きること」に全身全霊で頑張るしかない。
今度戻れる日は、初めて旅したあのときのように、カメラは少し置いておいて、自分の目で美しい景色を見る時間に充てたいです。
1日も早く、みんなが笑顔で旅できる日が戻ってきますように。