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人間失格 太宰治と3人の女たち

シネマキアート

今回紹介するのは、文豪・太宰治のスキャンダラスな恋と人生を大胆に映画化した『人間失格 太宰治と3人の女たち』。太宰が死の直前に完成させた「人間失格」は、累計1200万部以上を売り上げ歴代ベストセラーのトップを争う、世界で最も売れている日本の小説。その小説よりもドラマチックだった“誕生秘話”を描いています。

人間失格 太宰治と3人の女たち

本作のメガホンを取った蜷川実花監督は構想に7年を費やし、太宰治を演じた小栗旬は才気と色気にあふれたセクシーでチャーミングな太宰像を創り上げています。私は蜷川監督作品のなかで、本作が一番好きです。これまでは、写真家でもある蜷川監督が撮る妙々たる画が先行している感があったのですが、本作は蜷川監督が生み出す色鮮やかな世界観はいつものことながら美しく、その上で明治後期から昭和初期にかけた時代背景と、太宰治という文豪の壮絶な人生が絶妙な化学反応を起こしています。
私が日本映画を夢中で観ていた、鈴木清順監督、五社英雄監督、大島渚監督たち巨匠時代を彷彿とさせる“美しくて儚い”雅趣に富んだ素晴らしい作品でした。

人間失格 太宰治と3人の女たち 宮沢りえ

天才作家・太宰治(小栗旬)は、身重の妻・美知子(宮沢りえ)とふたりの子供がいながら恋の噂が絶えず、自殺未遂を繰り返すー。その破天荒な生き方で文壇から疎まれているが、ベストセラーを連発して時のスターとなっていた。太宰は、作家を志望する静子(沢尻エリカ)の文才に惚れこんで激しく愛し合い、同時に未亡人の富栄(二階堂ふみ)にも救いを求めていく。ふたりの愛人に子供がほしいと言われる日々の中で、それでも夫の才能を信じる美知子に叱咤され、遂に自分にしか書けない「人間に失格した男」の物語に取りかかるのだが……。

人間失格 太宰治と3人の女たち 沢尻エリカ

蜷川監督曰く「太宰治役は彼にしかできないと思った」と白羽の矢を立てられたのは、彼女と初タッグを組む小栗旬。「死ぬ気で恋、する?」というキザな台詞をするりと相手に囁く、究極のダメ男でモテ男を多面的に表現しています。そして、太宰の正妻・美知子を宮沢りえ、作家志望の愛人・静子を沢尻エリカ、最後の女・富栄を二階堂ふみが熱演。それぞれの世代を代表する女優たちが、一見太宰に振り回されているように見えて実は自分の意志で力強く生きている女性たちを、圧巻の演技力で魅せています。

人間失格 太宰治と3人の女たち 二階堂ふみ

脚本を担当したのは『紙の月』(2004)で映画脚本デビューし、日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞した気鋭の脚本家・早船歌江子。彼女は蜷川監督と話し合いながら、長い時間をかけてあらゆる文献を調べ尽くした上で、“能動的に堕ちてゆく”人々の物語を確たる文脈をもって丁寧に紡いだオリジナル脚本を書き上げています。最初から最後までぐいぐいと迫りくるストーリーに目が離せません。

今年6月で生誕110周年を迎えた太宰治。蜷川実花監督が、太宰の死への花道をどう彩り、どう演出したのか。また小栗旬が演じる太宰治の魅力にハマるのか、3人のどの女性に共感を覚えるのか、劇場で見定めて。

女性ウェブサイト「GLAM」では、小栗旬さんのインタビューを掲載(9月6日アップ予定)します。チェックしてください!
https://www.glam.jp/glammen_26_shunoguri/

『人間失格 太宰治と3人の女たち』

人間失格 太宰治と3人の女たち

9月13日(金)全国ロードショー
http://ningenshikkaku-movie.com/
(C)2019「人間失格」製作委員会

フリーランス エディター・ライター國方 麻紀(くにかたまき)
香川・丸亀出身、東京・吉祥寺在住のエディター・ライター。
女性誌『ELLE JAPON』『VOGUE JAPAN』のウェブエディター、ウェブサイト「GLAM」「tend」「BRASH」統括編集長を経て、現在はフリーランスに。好きな映画のジャンルは、バイオレンスや時代劇、B級など。
「このコラムを読んで普段観ないようなジャンルの映画にも興味を持ってもらえたらうれしいです!」
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