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私のごきげんな毎日

オン・ザ・ロック

シネマキアート

今回紹介するのは、ソフィア・コッポラの7本目の監督作品となる、都会派コメディ『オン・ザ・ロック』。ソフィアは出身地ニューヨークへの溢れる想いに軽快なタッチをブレンドし、父娘ならではの世代の違いが生む衝突や、現代の家族のややこしくておかしな繋がりを、スタイリッシュかつハートフルに描いています。観終わると、何とも言えない愛おしい気持ちになってしまいました。

オン・ザ・ロック

ニューヨークに暮らすローラ(ラシダ・ジョーンズ)は順風満帆な人生を送っていると思っていたが、結婚生活に疑いを持つようになり、稀代のプレイボーイである自分の父親フェリックス(ビル・マーレイ)に相談を持ち掛ける。フェリックスはローラにこの事態を調査すべきだとアドバイスし、父娘2人で夫のディーン(マーロン・ウェイアンズ)を尾行する。夜の街へと繰り出すうちに、フェリックスとローラは自分たち父娘の関係についてある発見をすることに……。

何と言っても、ビル&ラシダの父娘コンビの息がぴったりで素晴らしい!
ソフィアがビルを起用するのは、『ロスト・イン・トランスレーション』(2003)以来となりますが、とにかく御歳70のビル・マーレイが最高にチャーミング♪ 幼い頃に観た『ゴーストバスターズ』(1984)では“面白おじさん”という印象でしたが、ソフィアをはじめウェス・アンダーソンやジム・ジャームッシュの常連俳優となり、年々色気が増すばかり。以前も紹介しましたが、私はとくに『ブロークン・フラワーズ』(2005)と『ヴィンセントが教えてくれたこと』(2015)が大好きなのですが、今回も一癖アリの憎めないオヤジを飄々と演じています。娘と一緒に探偵ごっこするのがうれしくて堪らない様子が本当に可愛いのです。

ラシダは、マイケル・ジャクソンのあの伝説的アルバム『スリラー』(1982)などを手がけた音楽プロデューサーのクインシー・ジョーンズの娘。ソフィアとラシダは二世&同業(監督・脚本家・プロデューサー・女優とマルチに活躍)同士ということで(!?)、もともと親交が深く、今回ラシダが演じたローラは「まるでソフィア!?」と思うほど、等身大のソフィアが投影されているように思います。愛する夫の浮気を疑い、仕事に行き詰まり、子供のお迎えにはシンプルなボーダートップにVansのスニーカー、そしてシャネルのショルダーバッグというスタイル。これまでソフィアが創り出してきたキラキラしたガーリー・ムービーのヒロインではなく、まもなく50歳を迎えるソフィアが現代の中年女性のリアルなストレスを描いているのは新鮮で面白く、心が温まりました。

「この映画は私からニューヨークへのラブレター」とソフィアが語る『オン・ザ・ロック』。ニューヨークの街で繰り広げられる、ベタなロマンティックコメディではなく、父娘・家族の関係性を愛おしく描いたストーリーにほっこりしてください。


『オン・ザ・ロック』
10月2日(金)より全国ロードショー
http://ontherocks-movie.com/
(C) 2020 SCIC Intl Photo Courtesy of Apple

10月23日(金)よりApple TV+にて世界配信
https://tv.apple.com/jp/movie/%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF/umc.cmc.1mydlea6wicrm013138speg6m?l=ja

フリーランス エディター・ライター國方 麻紀(くにかたまき)
香川・丸亀出身、東京・吉祥寺在住のエディター・ライター。
女性誌『ELLE JAPON』『VOGUE JAPAN』のウェブエディター、ウェブサイト「GLAM」「tend」「BRASH」統括編集長を経て、現在はフリーランスに。好きな映画のジャンルは、バイオレンスや時代劇、B級など。
「このコラムを読んで普段観ないようなジャンルの映画にも興味を持ってもらえたらうれしいです!」
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