今年も漫画原作の実写化がたくさんありますね。私は漫画が好きなので、多くの漫画ファンと同じく、むやみやたらに人気漫画を実写化するのは反対です。実写化するならば、1.キャラクターや世界観が原作イメージとかけ離れていない、2.実写化する意味がある、3.(原作を超えないまでも)それを観て心が揺さぶられるかが重要だと私は思います。
男性漫画はアクションがあったりするので、実写の意味や満足感が無きにしも非ずですが、その点、少女漫画の実写化は難しいです。いくら「壁ドン」やら「顎クイ」という言葉が流行語になっても盛り上がっているのは女子高生あたりだけのような…。ちなみにここ最近で私の3つの条件をクリアして面白いと感じた少女漫画実写映画は、『君に届け』(2010)と『天然コケッコー』(2007)だけだったのですが、久々にこの条件をクリアした作品と出会ったので紹介したいと思います。それは、本コラム初の邦画『ちはやふる 上の句』『ちはやふる 下の句』です。
累計発行部数1500万部を突破する末次由紀の原作漫画『ちはやふる』(講談社)は、スポ根と恋愛がいい塩梅で連載初期から愛読しています。それが実写化されると聞いて、当初発表されたキャストと私の中のキャラクターのイメージが違うし、既刊30巻あるものをどうまとめるのか心配でしたが、上下観てみるとなかなかどうして! 想像以上の出来栄えで大人の女性におすすめしたくなりました。
本作は、競技かるたに情熱を懸ける千早(広瀬すず)、太一(野村周平)、新(真剣佑)ら高校生たちの友情・恋愛・成長を熱く切なく描いた青春映画なのですが…、前に書いたように当初広瀬すずちゃん以外のキャストが私はしっくりきませんでした(すずちゃんも賛否両論あったと思いますが、私は主人公の千早が高身長という設定だけで、演技ができないモデルが選ばれなくて良かったと思っています)。が、映画では太一をはじめとした瑞沢高校かるた部のメンバーがそれはもう生き生きとしていて、新派の私をも納得させる真剣佑くんのメガネと福井弁に萌えました。
そして、見事に“畳の上の格闘技”と呼ばれる「競技かるた」を表現していて、実写だからこそ出せた躍動感がそこにはありました。
また『タイヨウのうた』(2006)、『カノジョは嘘を愛しすぎてる』(2013)の小泉徳宏監督が、今回は本当にうまくまとめていると思います。あれもこれもと多くの要素を入れ込まず、過剰に三角関係を盛り上げず、エンディングもまだ続いている原作に敬意を払って作っています。これには原作者が太鼓判を押すのもよくわかります。
余談ですが、今年は他にも私の好きな漫画の実写映画があります。『秘密 THE TOP SECRET』(8月6日公開)と『にがくてあまい』(公開日未定)は、これまたキャストがイメージとは違いますが…、本作のように想像以上の出来栄えを期待しておきます。また、大本命の『3月のライオン』(公開日未定)は、まだキャスト(神木隆之介くんで何卒!)も監督も発表されていないので、朗報を待ちます。(私が愛してやまない漫画『キングダム』は絶対に実写化しないでほしいと願いますが…。)洋画だとマーベルコミックの『デッドプール』(6月公開)、DCコミックの『スーサイド・スクワッド』(9月公開)は本当に期待大です!
アメコミと違って、日本漫画の実写化って本当に難しいですね。でも私は本作のおかげで、久々に日本漫画の実写映画を楽しむことができました。青春映画の新たな金字塔の誕生に、劇場で震えてください。
『ちはやふる 上の句』3月19日(土)/『ちはやふる 下の句』4月29日(金・祝)
二部作連続公開
http://chihayafuru-movie.com/
(C)2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C)末次由紀/講談社