オードリー・ヘップバーン主演の不朽の名作『ローマの休日』(1953)の原案者が、長年本編クレジットされている人物とは別人だったことをご存知でしょうか? つい最近の2011年に同作の真の原案・脚本として正式にクレジットされたのが、今回紹介する『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』のダルトン・トランボです。冷戦時代に固い信念を貫いたトランボの型破りでユーモアに満ちた生き様に私は魂が揺さぶられました。
舞台は第二次世界大戦後のアメリカ。赤狩り(共産主義とその同調者を取り締まる運動)が猛威をふるうハリウッドで、売れっ子脚本家のトランボは理不尽な弾圧に抵抗した理由で投獄される。出所後は偽名で創作活動を続け、友人イアン・マクレラン・ハンターの名で発表した『ローマの休日』と、偽名で書いた『黒い牡牛』(1956)がアカデミー賞を受賞する。言われなき汚名を着せられハリウッドから追放され、栄えあるアカデミー賞のオスカー像を受け取ることもできなかったトランボの苦難と復活の軌跡を映画化した実録ドラマ。
のちに『スパルタカス』(1960)『パピヨン』(1973)といった傑作も手掛け、数奇な運命を辿ったトランボを演じるのは、TVドラマシリーズ『ブレイキング・バッド』(2008-2013)で4度のエミー賞に輝いたブライアン・クランストン。孤高の映画人として、愛すべき父親としてのトランボのユニークな人間性を多面的に表現し、本年度アカデミー賞主演男優賞に初ノミネートしました。また脇を固める俳優たちも素晴らしい。トランボの聡明な娘ニコラをエル・ファニング、トランボを執拗に糾弾するコラムニストのヘッダー・ポッパーをヘレン・ミレンが演じ、味わい豊かなアンサンブルを披露しています。
『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』は、当時のハリウッドの内幕をきめ細やかに描き、ジョン・ウェインやカーク・ダグラスなどのハリウッドスターが多数実名で登場するので、ハリウッドの黄金期に思いを馳せることができ、また言論や思想の自由という現代に通じるテーマを追求し、観客にポジティブな余韻をもたらしてくれます。とくにトランボの最後のスピーチは感動的で必見です!
トランボ ハリウッドに最も嫌われた男
7月22日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ他 全国ロードショー
http://trumbo-movie.jp/
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