今回紹介するのは、バレリーナを夢見るトランスジェンダーの少女ララの成長を描いた映画『Girl/ガール』。イノセントなララと彼女を全力で支える父の想いが交錯し辿り着く結末とは? こんなにも物語の展開にドハマリしたのは久しぶりで、観終わった後は心が揺さぶられました。
プロのバレリーナを目指す15歳のララ(ビクトール・ポルスター)は、男の体に生まれてきたトランスジェンダー。国内有数のバレエ学校への試験編入が認められ、父マティアス(アリエ・ワルトアルテ)と6歳の弟の家族3人で新天地へとやってくる。夢の実現のためララは毎日厳しいレッスンを受け、血のにじむような努力を重ねながら、定期的に通院して男性としての二次性徴を抑さえる療法を受けている。初めての舞台公演が迫る中、ライバルから向けられる心ない嫉妬、思春期の身体の変化により思い通りに動けなくなることへの焦りが、徐々に彼女の心と体を追い詰めていく……。
本作は2009年にベルギーの新聞に掲載されたバレリーナになるために奮闘するトランスジェンダーの少女の記事に心を動かされた監督ルーカス・ドン(当時18歳)が、“必ず彼女を題材にした映画を撮る”という強い想いからアプローチを重ね、約9年の歳月を経て誕生しました。
長編デビュー作ながら昨年の第71回カンヌ国際映画祭に選出されるとメディアから喝采を浴び、カメラドール(新人監督賞)を受賞。アカデミー賞R外国語映画賞〈ベルギー代表〉選出ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞ノミネートという快挙を成し遂げました。若くて美しい俊英ということで、「第2のグザヴィエ・ドラン“ニュー・ドラン”」とも称されています。
そして、主演を務めたビクトール・ポルスターは、アントワープ・ロイヤル・バレエ・スクールに通う現役のトップダンサーで、500人以上の候補者の中から選ばれた逸材です。本作で一切の代役も立てずにすべてのダンスを踊ったビクトールですが、これまでトウシューズで踊った経験がなかったため、撮影前の3カ月間はトウシューズで踊るレッスンを徹底的に受けたとか。初の映画出演でシスジェンダー(身体的性別と性同一性が一致している人)でありながら、ララの繊細な表情や思春期の心の機微を見事に表現し、バレエシーンでは圧倒的なパフォーマンスを見せています。
映画史上最も鮮烈でエモーショナルなクライマックスを迎える『Girl/ガール』。「本当の自分自身でいること」を選び生きていくヒロインとその家族の絆の物語を劇場で見届けてください。
Girl/ガール
7月5日(金)新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー
http://girl-movie.com/
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