デヴィッド・クローネンバーグ、マイケル・マン、ジョニー・トー……私が新作を楽しみにしている監督のひとり、クリストファー・ノーランが、3年ぶりにメガホンをとった新作は、戦時中に起こった実話ベースのタイムサスペンス『ダンケルク』。『ダークナイト』(2008)『インセプション』(2010)『インスターステラー』(2014)と、新作毎に圧倒的な映像表現と斬新な世界観で、観客を驚愕させてきたノーラン監督が、イギリスで実際にあった史上最大の救出作戦を、陸・海・空の3つの視点で描いています。
女性の皆さんは普段、戦争映画は観ないかもしれませんが、本作は相手を打ち負かす「戦闘」ではなく、生き残りをかけた「撤退」の物語で、これまでの戦争映画を覆す、新たな映像体験と感動が味わえます。ノーラン監督としては短い99分間の本編(上映時間は1時間46分)で、手に汗握る展開に私は酸欠になりそうなほどのめり込んでしまいました。
舞台は1940年の第二次世界大戦真っ只中のドーバー海峡に面したフランスの港町ダンケル。ヒトラー率いる80万人のドイツ軍により、イギリスとフランスの連合軍兵士40万人がこの地に追い詰められ、撤退作戦が決断されます。兵士たちを助けようと、英空軍パイロットのファリア(トム・ハーディ)や民間の船長ドーソン(マーク・ライランス)らが救助に向かう中、若き兵士トミー(フィオン・ホワイトヘッド)やアレックス(ハリー・スタイルズ)は、絶対絶命の窮地から生き抜くことができるのか……!?
私が本作で楽しみにしていたひとつが、本作で俳優デビューを果たしたワン・ダイレクションのハリー・スタイルズ。トレードマークの長髪を役柄のためにばっさりカットして(それをチャリティー団体に寄付して)、熱演していました。それで燃え尽きてしまったのか、7月13日(現地時間)に行われた同作のロンドン・プレミアでは、「(本作が)最初で最後かもしれない」と俳優業引退を示唆するような発言も。ハリーファンの皆さま、俳優ハリーはこれで見納めかもしれないので彼の勇姿をスクリーンでぜひ!
また、主人公のトミー役を射止めたのは、皿洗いから大抜擢された新人俳優フィオン・ホワイトヘッド。英新人俳優たちを英実力俳優のマーク・ライランスや海軍士官役のケネス・ブラナーらが盛り上げています。決して派手ではないのですが、いぶし銀の演技で涙を誘います。そして、なんとトム・ハーディの実祖父は戦地ダンケルクにいて、実際の話を聞いて撮影に臨んだとか。パイロットマスクを付けているトムハの美しいお顔がいつ登場するのかにも注目してください!
台詞はほとんどなく、緊迫感を高める荘厳な音楽が鳴り響き、デジタルやCGは極力使わないという、徹底してリアルにこだわった『ダンケルク』。陸での1週間、海での1日、空での1時間と、それぞれのストーリーに合った時間の尺度を上手く組み合わせているノーラン監督の手腕はさすがです! きっと、誰もがこの史上最大の救出作戦に引きずり込まれることでしょう。
ダンケルク
9月9日(土)全国ロードショー
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