もしも火星に独りぼっちになったら…? 外気温−55℃、酸素ほぼなし、水なし、通信手段なし、食料31日分、次の探索ミッションまで4年。この生存不可能な状況で、地球から2億2530万キロ離れた火星に独り取り残された宇宙飛行士は、いかにして究極の絶望に立ち向かったのか? 新人作家アンディ・ウィアーによる前代未聞のベストセラー小説「火星の人」を、リドリー・スコット監督×マット・デイモン主演で映画化した『オデッセイ』を今回は紹介します。
火星での有人探査の最中、宇宙飛行士のマーク・ワトニー(マット・デイモン)は猛烈な嵐に巻き込まれ死亡したと推測され、船長のメリッサ・ルイス(ジェシカ・チャステイン)ほか残りの乗組員は火星を去ってしまう。しかし生き延びたマークは過酷な状況で、知恵と精神力、創意工夫の才能を発揮する。たった独りで4年後の探索ミッションまで生きる希望を決して諦めない男の姿が描かれる。
こんな絶望的な状況では、生きていくことはできないだろうから、すぐに仲間がマークの生存に気付いて助けに来る、もしくは火星で出会う何かと共存して生きるのかと思いきや、なんとこの不屈の男は誰の助けも借りずに火星で生活しようとするんです。2013年公開のサンドラ・ブロック主演の『ゼロ・グラビティ』では、宇宙空間を生き抜く女性飛行士の姿を描いていましたが、本作では火星での孤独なサバイバル・ドラマと人類の壮大なる奇跡への挑戦に心揺さぶられます。
本作はただ苦しい、辛いだけの映画ではありません。どんな状況でも、希望とユーモアを失わない姿は、映画史に残る新たなヒーロー像となるでしょう。また、70年代のディスコ・ミュージックも明るい気分にさせてくれます。
リドリー・スコット監督が圧倒的なリアリティとスリルみなぎるヴィジュアルを創出し、マット・デイモンが究極の極限状態においても、人間性を失わない主人公を魅力的に体現しています。その甲斐あって、今月発表された第73回ゴールデン・グローブ賞には、ミュージカル・コメディ部門の作品賞と主演男優賞の2冠に輝いた本作。興行成績でも全世界ではまもなく6億ドル(約700億円)突破を迎え、リドリー・スコット監督作品として過去最高の成績を上げ、全米の批評サイト「ROTTEN TOMATOES」では93%の批評家に支持されています。
そして、2月28日(現地時間)発表の第88回アカデミー賞にも作品賞、主演男優賞、脚色賞、美術賞、視覚効果賞、録音賞、音響効果賞の7部門にノミネートされました。作品賞では、リドリー・スコット監督作品としては受賞した『グラディエーター』(2000)以来2度目のノミネート。また『グッドウィル・ハンティング』(1997)で脚本賞を受賞しているマットは、俳優としては過去2回ノミネートされており、初のオスカー獲得なるかというところ。
今年のアカデミー賞主演男優賞ノミネートは華やかな面子が揃い、マットはレオナルド・ディカプリオ(『レヴェナント:蘇えりし者』)、エディ・レッドメイン(『リリーのすべて』)、マイケル・ファスベンダー(『スティーブ・ジョブズ』)、ブライアン・クランストン(『トランボ(原題)』)と争うことに。ただ、今回は「レオにオスカーを!」という応援熱が高いように感じます。斯くいう私もそのひとりですが。なので、マットの受賞は難しいのかな…と個人的に思っています。
でもマットといえば、『ボーン』シリーズ最新作(2016年7月29日全米公開予定)で、またジェイソン・ボーンを演じることが決まっており、彼のビルドアップした肉体の写真も公開されました。シリーズ2作で監督を努めたポール・グリーングラスがメガホンをとり、仏俳優のヴァンサン・カッセルが悪役を演じるとか。期待大です!
『オデッセイ』の話に戻りますが、フィクションとはいえ、こういう映画を観ると、ちょっとやそっとのことで音を上げてはいけないなと感じます。今年はまだ始まったばかりですが、この超ポジティブ思考の主人公に触発されれば、大変だと思うハードルもひとつずつ乗り越えられる気がします。
オデッセイ
2月5日(金)TOHOシネマズ スカラ座他全国ロードショー
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