私は、笑って泣けて+ちょっとシュールな家族映画が大好きでよく観ます。このジャンルで近年のお気に入り映画は、『リトル・ミス・サンシャイン』(2006)、『ラブ・アゲイン』(2011)、『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』(2014)なのですが、新たに同ジャンルのマイ・リストに加えたいフランス映画『エール!』を、今回は紹介したいと思います。
本作は、聴覚障害者の家族と彼らの生活を支える健常者の長女ポーラ(ルアンヌ・エメラ)の人生を描くヒューマン・ドラマ。全仏で4週連続No.1、12週連続TOP10入りを果たし、動員750万人超えの大ヒットを記録しました。
フランスの田舎町で農家を営むベリエ家は、高校生のポーラ以外、父も母も弟も全員耳が聴こえないが、陽気な仲のいい家族。ある日、ポーラの歌声を聴いた音楽教師はその才能を見出し、彼女にパリの音楽学校のオーディションを受けることを勧める。しかしポーラの歌声を聴くことができない家族は、彼女の才能を信じることができない。家族から猛反対を受けたポーラは、夢を諦めようとするが……。
主人公ポーラ役に抜擢されたのは、音楽オーディション番組「ザ・ヴォイス」仏版で注目を集めた新星ルアンヌ・エメラ。映画に初めて出演した本作で、瑞々しさ溢れる等身大の演技と圧倒的な歌唱力で観客を魅了し、本年度のセザール賞(≒仏版アカデミー賞)、リュミエール賞(≒仏版ゴールデン・グローブ賞)の最優秀新人賞を受賞しました。
また、ポーラの父母を演じたフランソワ・ダミアンとカリン・ヴィアールの手話の演技は素晴らしく、弟役のルカ・ジュルベールは実生活でも重度の障がいを持ち、演技経験もなかったにも関わらずイキイキと演じています。ベリエ家にはむき出しの愛があり、そのやりとりを見ているとつい笑みがこぼれます。
そして驚くべきは、本作でルアンヌは、ミシェル・サルドゥの名曲(「恋のやまい(La Maladie d’Amour)」は、「愛の出帆」というタイトルでジュリーが日本語カバーも!)を数曲歌っていますが、どの歌詞も本作のストーリーと見事にシンクロしているということ。ラストシーンの「青春の翼(Je Vole)」では、家族からの旅立ちを歌い、涙なくしては観られません。
ちなみに本作のタイトル『エール!』は、①Air(仏語)曲、②Aile(仏語)翼、③Yell(英語)応援という意味があるそうです。少女の夢と家族への愛を乗せた歌声が起こした奇跡をぜひ劇場で。愛おしい気持ちになりますよ!
『エール!』
新宿バルト9ほか全国公開中
http://air-cinema.net
【配給・提供】クロックワークス、アルバトロス・フィルム
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