もうすぐ夏も終わりですね。今回は、新しい季節へのスタートにぴったりな映画『わたしに会うまでの1600キロ』を紹介します。
本作は、たった一人で3ヶ月間、アメリカ西海岸を南北に縦断する自然歩道「パシフィック・クレスト・トレイル」という1600キロ(日本でいうと青森から鹿児島までの距離)の過酷なコースを踏破し、どん底の日々からベストセラー作家へと人生をリセットした女性シェリル・ストレイドの実話を映画化した作品。トレイル初心者の彼女がトレーニングも受けずに、どうしてこんな無謀な旅を決意し、どうやって成し遂げたのか、気になりませんか?
スタートしてすぐに、「バカなことをした」と後悔するシェリル。バックパックは重いし、靴を谷に落としてしまうし、空腹だし、野生動物や出会う男たちに襲われそうで怖いし…。最愛の母の死に耐えられず、優しい夫を裏切って男とドラッグに溺れ、このままでは残りの人生も台無しだと思い、始めた人生をリセットするための旅。本作の原題は『Wild』なのですが、タイトル通り自然の荒野の道は人生よりも厳しく、何度もやめようと思いながら歩き続ける中で、シェリルの断片的な過去の回想が描かれ、その世界観にどんどん引き込まれていきます。そこで本当の自分と向き合い、出口を見つけることができるのか…?
このシェリルの自伝を読んだリース・ウィザースプーンは、本人に電話をして感動を伝え、映画化を申し出たそう。その熱意でリースはシェリルの冒険を体現しています。また母親ボビー役には『ジュラシック・パーク』(1993)でお馴染みのローラ・ダーン。母と娘の心の絆を絶妙に演じ、今年のアカデミー賞主演&助演女優賞Wノミネートを果たしました。そして、監督は『ダラス・バイヤーズクラブ』(2013)でアカデミー賞主演(マシュー・マコノヒー)&助演(ジャレッド・レト)男優賞でオスカーをもたらした、ジャン=マルク・ヴァレ。2年連続のWノミネートはアッパレです!
ところでリースといえば、アメリカ独立宣言署名者の子孫で、『キューティ・ブロンド』(2001、2003)シリーズが大ヒットし、『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』(2005)ではアカデミー賞主演女優賞を獲得するなど、優等生でキュートなイメージが。しかし、昨年4月に新夫ジム・トス(旧夫は『クルーエル・インテンションズ』(1999)共演のライアン・フィリップ)が飲酒運転で逮捕される時に、警察の命令に従わず「私が誰か分かってんの?」と発言し、夫と共に逮捕され、すっかりイメージダウン。その後、すぐに謝罪声明を出し、本作の記者会見でも「ベストなことは、間違いから学んで前に進むこと」と語っていました。
リースは主演するはずだった『ゴーン・ガール』(2014)は、(デヴィッド・フィンチャー監督が主演のイメージが違うと難色を示したため)製作だけにし、汚名返上と奮起し、本作の主演&製作に専念しています。“これぞ女優”とばかりに体を張った、これまでにないリースを観ることができます。完全にイメージをリセットできたのでは? ちなみに次回作は女性宇宙飛行士の映画『Pale Blue Dot(原題)』の主演&製作をするようです。山の次は宇宙と、スケールが大きくなっていますね。
丁度去年の今頃、私はやりたいことがあったので、会社を辞めて新しいことに挑戦しました。本作ほどのリセット感はありませんが、後悔はないし、直感を信じて実行して良かったと思っています。自分や環境を変えたい時は、後先考えずに飛び込むというのもいいものです。本作を観れば、背中を押されパワーがみなぎるはず。劇中に出てくるたくさんの名言にも心が動かされますよ!
わたしに会うまでの1600キロ
8月28日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
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