CheRish Brun.|チェリッシュブラン

ちょうどいい私、ちょうどいい暮らし。心地よく、ごきげんな毎日へ。

楽園の果実は、甘く危うく

魔法の香り手帖
ジャルディーノ・デリッツエ パルファン

夏の夕暮れ、都会の喧騒がすこし静まる頃。コンクリートの隙間から立ちのぼる熱気に、どこか遠くで咲くジャスミンの気配がまざり合う。湿度のある生ぬるい風が頬をかすめ、いつもより少しだけ敏感になった感覚。その一瞬、ふとよぎるのは明確な記憶ではない、抗いがたい欲望、名前のない甘さ、ほんの少しの罪の匂い。

何か、または誰かに惹かれるとき、それが祝福なのか、破滅のはじまりなのか…。私たちはいつも、その見極めができないまま、手を伸ばしてしまう。そして後になって気づく。嗅覚だけが、すべてを知っていたことを。

NOBILE 1942より、今年発売されたフレグランス『IL GIARDINO DELLE DELIZIE(ジャルディーノ・デリッツエ パルファン)』は、ヒエロニムス・ボスが描いた三連祭壇画『快楽の園』からインスピレーションを得て生まれたという。香りは、その混沌と官能の世界を、嗅覚というかたちでそっと描きなおしている。祭壇画を開くと、中央に現れるのは──歓喜と享楽の奔流。幻想の中ですべてが過剰に、なまめかしく、妖しく描かれている。

ほんとうにそれは“楽園”なのか──
それとも、”楽園”という名の檻なのか。
この香りは、そんな問いを、静かに、けれど確かに呼び起こしてくる。
快楽の宴のあとに残るのは、やわらかな余韻、それとも沈黙だろうか。

残香には寂しさと、妙な安心感。わたしたちは“正しさ”の中だけでは生きられない。まっすぐで、無害で、管理された清潔な世界だけでは、心が干からびてしまう。だからこそ、ほんの少しだけ、背徳に身を委ねることが必要なのだ。

この香りは、そんな微細な感情のゆらぎに、静かに正直であり続ける。それは救いかもしれないし、堕落の始まりかもしれない。確かなのは、この香りを身にまとえば、人は自分の“欲望”とひとつ、静かに握手を交わすということ。

香りは、決して裁かない。
ただそこに在り、そっとささやいてくる。
「選ぶのは、あなた自身」──と。

ジャルディーノ・デリッツエ パルファン

【掲載商品】
■NOBILE 1942
『ジャルディーノ・デリッツエ パルファン』
(75mL ¥28,600)
https://forte-tyo.co.jp/

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