CheRish Brun.|チェリッシュブラン

ちょうどいい私、ちょうどいい暮らし。心地よく、ごきげんな毎日へ。

チョウワノサキニアルカオリ

魔法の香り手帖
AHRES Sound Skin Perfume

夏の早朝に感じる、今日は暑くなるという予兆をはらんだ澄んだ空気が好きだ。まだ眠そうな世の中と、どこか緊張感を帯びた静けさの中で、私はそのひんやりとした透明な匂いに目を閉じる。文明の進歩がどれだけ加速しても、変わらずにある“空気”の感覚は、私たちをノスタルジーにも未来にも容易に運んでいく。

「人類の進歩と調和」は、1970年の大阪万博のテーマだ。AIや宇宙開発、量子コンピュータの時代にあっては、少し古めかしく聞こえるかもしれないが、高度経済成長の中で、“ただの進歩”ではなく、“人と自然、科学と文化の調和”を実現するために掲げられたテーマだった。「調和」という言葉は、これからの時代を生きる私たちに必要な美しさを秘めている。

昨年、AHRES(アーレス)のフレグランス『Sound Skin Perfume #ジンルイノシンポトチョウワ 盾』に出会った。暗闇で光りそうなほどエレクトリックなパープル色のジュースが美しく、目を奪われた。そして香りを試して、素晴らしい、纏いたいと感じた。

フィグとゼラニウムのグリーンでハーバルなジューシーノート、マグノリアのミルキーな甘さに、人類を原点に引き戻すような薫香が重厚感を醸し出す。未来的でありながらプリミティブで、行きつく先は静寂だ。

一見すると硬質なコンセプトのように思うが、その中には深い哲学と遊び心が込められている。現代社会に対する小さな問いかけであり、個人の内側を守る目に見えない盾でもある。人のタイプを、「盾」と「矛」で考えてみると、私は「矛」の人間だろう。守りよりも、切り開いていくことが好きだ。だから香りで「盾」を必要としたのかもしれない。

進歩とは、ただ前に進むことではない。調和を保ちながら、自分の速度で歩んでいくこと。矛盾も陰陽もすべては同じこと。香りは、そんな人類の歩みをそっと映し出す、静かな記録装置なのかもしれない。

美しいボトルに込められた「盾」。
この香りに、ひとときの静けさと希望を託しながら、今日も生きている。

AHRES Sound Skin Perfume

【掲載商品】
■AHRES(アーレス)
「Sound Skin Perfume #ジンルイノシンポトチョウワ 盾」
(8mL ¥4,400 / 50mL ¥11,800)
https://ahres.jp/

美容ジャーナリスト香水ジャーナリストYUKIRIN
ナチュラルコスメとフレグランスのエキスパートとして、
「香りで選ぶナチュラルスキンケア」や、「香りとメイクのコーディネート」など提案する他、香りから着想される短篇小説を連載中。

媒体での執筆・連載の他、化粧品のディレクション、イベントプロデュース、ブランドコンサルティングなど幅広く活動している。
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