フリーでいいのか、いつも迷っていた
――最初からフリーを目指していたのですか?
いえ、違います。学校を卒業してからは出版社で雑誌を作っていました。20代前半は会社で仕事の基礎を教えていただいた感じです。その後、写真家で映画監督の本橋成一さんが立ち上げたポレポレタイムス社でお世話になりました。そこで写真集などの編集をしながら、他にもありとあらゆる仕事をしましたね。イベントの運営や雑用も全部。ここではたくさんの面白い方を紹介していただきました。フリーになった時、そこで出会った方からいただいた仕事もたくさんありました。
ポレポレを辞めたのは、周りの人達は基本的に写真家として独立することを目指して会社にいるので、どんどん独り立ちしていくんです。でも私は写真家でもないし宙ぶらりんで。その頃本橋さんが映画を撮ると言われて。そうなるとあと3年は私ここで働くことになるなあと思って、ちょうど30歳だったし、辞めるなら今のタイミングかなと思って独立しました。
フリーでやっていける自信はまったくありませんでしたが、一度試してみようと思って。30代は雑誌の仕事が多かったです。紹介してもらった女性誌の編集部に週4日くらい通って、合間にやりたい単行本や事典の仕事をして、という感じでした。
――40代から徐々に単行本のお仕事が増えていったのですか?
そうですね。雑誌の仕事などで魅力的な方に会うと、「もっとこの人の話を聞きたい!」と思うんですよ。そこから単行本の企画をたて、出版社に持ち込むことも多いです。むのたけじさんという、100歳を超えてもジャーナリストとして活動されていた方も、99歳のときに子ども向けの雑誌の取材で初めてお会いして。もっとむのさんのお話が聞きたいと思って単行本の企画を立てていたら、同じことを考えていた出版社の人に出会って、『むのたけじ 100歳のジャーナリストからきみへ』(汐文社 2015年)シリーズができました。
出版の半年後にむのさんは亡くなり、大切な遺言を聞かせていただいた気持ちでした。
[amazonjs asin=”4811310977″ locale=”JP” title=”100歳のジャーナリストからきみへ(全5巻)”]――どの本にも、出会いの物語があるのですね。フリーランスはご自分に合っていると思われますか?
何か強い思いがあってなったわけではないので、私なんかがフリーで仕事をしていていいのかな、という迷いはずっとあるんです。でも1年くらい前に知り合いから、「仕事のやり方は2種類ある。1つは自分でボートに乗って自分で漕いで進んでいくタイプで、逆流も辞さない。もう一つは上流から流れてきたタイヤに乗っかっていくタイプ。あなたは後者でしょ。ボートに乗っている人がうらやましいかもしれないけれど、ボートは転覆する。その点タイヤは転覆しないし、降りたければ自分で岸に近づいて降りればいいんだよ」と言われて、すごく気が楽になりました。迷いもあるけれど、こうして細々でも続けられているということは、この仕事が向いているのかなって。