「窓を開けるのが楽しみになった」
――個人宅から大きなミュージアムの庭まで、さまざまな仕事をされてきた中で、印象的だった出来事はありますか
一人暮らしのおじいさんから以前庭木の剪定を頼まれました。剪定し終わって数日たった時におじいさんが「朝起きて窓を開けるのが楽しみになったよ」と言ってくださったんです。その時、すごく嬉しくて。その庭は他の人が作った庭で、私好みだったわけではないのですが、ご高齢で出歩くこともほとんどないおじいさんにこの言葉をかけてもらって、“ああ、庭づくりは、そこの雰囲気が気持ちいいなと思ってもらえることが一番大事なのかな”と思うようになりました。
――おじいさんの言葉、素敵ですね。他にも庭づくりで大事にされていることはありますか。
やっぱり植物が生き生きしていることかな。どんなに素敵なデザインの庭でも、植物の元気がなかったらあまり気持ちよくありません。難しいけれど、最低限クリアしたいことです。
私は、母が植物が好きで、小さいころ一緒に散歩をしながらよく植物の名前を教えてもらっていました。だからどんな草でも好き。本当は草取りもしたくないくらい。どんな小さな草でも、そこで生き生きとしているのが一番いいと思っています。
そのためにも大事なのが、先ほどの親方の言葉、水と空気なんです。それが滞っていたりすると、土の質がかわってきて。実は、いくら頑張っても木や草が育たない場合、逆にあばれてしまう場合、地下に問題があることもあって。いろいろ工夫しないと植物を元気にしてあげられないこともあります。
今年でこの仕事を始めて18年目。3年前には子どもも生まれて、子育てしながらの仕事のやり方は試行錯誤です。技術的なことは、もちろん会社で先輩に習ったこともあるけれど、現場は一つとして同じ所がないので、こちらもいつも試行錯誤です。