美しい庭があってこその建築の魅力
――学校では、建築を勉強されたのですね。
そうです。最初は建築に興味があって。専門学校に在学中は設計事務所でアルバイトもしていたのですが、実はあまりピンとこなかったんです。でも、実際の現場を見に行くようになり、そこで、左官屋さんの壁づくりや庭師さんの庭づくりを見て、すごく新鮮だったんです。身近にある素材を扱っているところにも興味がわいて。
ある時、左官屋さんが、壁を土とわらと砂を混ぜて塗っていたんです。とにかく作っているところを見るのが楽しくて、現場に通いました。
それで、建築設計の道に進む選択肢もあったのですが、私には現場でモノづくりをしていくほうが向いているような気がして、また建築だけでは気持ちよい場所はつくれないと感じて卒業後は造園の会社に就職しました。最初の現場は八王子のお寺だったかな。
――最初の会社は1年で辞め、違う会社に移られます。
実は最初の会社に入る直前に、そのあと移った会社の親方に出会いました。庭づくりを水と空気から考える人です。具体的には、地上だったら雨や風の影響があり、地下にも浸透した水や空気の流れがある。それらがすべてすこやかに流れてこそ、木々も元気になるし、石も美しく見えると。私にとってその考え方はとても新鮮で、この人のところで仕事をしてみたいなと思いました。
最初の会社の親方にはとても感謝しています。なにもわからない全然使えない女の子を1年近く居させてもらえて、今でも声をかけて下さるのですから。
――その後独立されます。
約8年働いて、結婚してから夫の仕事の本拠地である長野に引っ越してきました。こちらに来てからは、造園屋さんでアルバイトをさせてもらいながら、自分でも仕事を請けていました。その頃にINAXライブミュージアム(愛知県)の庭の仕事に携わり始めました。年間通しての庭の管理、環境整備を担当しています。お客さんと一緒に庭仕事をすることもあります。
INAXライブミュージアムで行われた「「夏の庭仕事体験」ワークショップ」様子はこちらからご覧いただけます