その商品の生産背景も意識して
――ココナッツオイルとの出合いはなにがきっかけだったのですか?
焼き菓子には大量のバターを使うのですが、ある時ふと、バターはおいしいけれど、健康な体を作るうえで最善な選択肢ではないのでは、と思いました。そこでバターに代わるオイルを探し始め、米国のあるブログがきっかけでココナッツオイルに出合います。
当時日本ではほとんど取扱いがなかったのですが、辞書を片手に英語のサイトを読んでいくとココナッツオイルは「脳の活動をサポートする中鎖脂肪酸がたくさん含まれる」とか、「免疫力を高めるラウンリン酸を多く含み、逆に、発がんリスクを高めると言われているトランス脂肪酸を含まない」といった気になる記事を散見し居ても立っても居られなくなりました。さっそくアメリカから個人輸入してみてバターの代りに実際にお菓子づくりに使ってみると、とてもおいしく出来上がりました。この素晴らしいオイルをもっと日本に広めたい! と思い、ココナッツオイルの主な生産国であるフィリピンへ飛び、生産工程も品質も納得できるものを探して、2013年に株式会社を立ち上げ、ココナッツオイルの輸入・卸業をスタートしました。創業時から変わらないのは、ココナッツオイルも含め、「わが子に食べさせたいかどうか」を基準に食品を厳選して販売することです。
――荻野さんは商品の生産の背景についても積極的に消費者に知ってもらう努力をしています。
フィリピンでは、貧困層の人たちがまだ多くいます。ある工場へ視察に行った時、そこで働く女性のプリンセスちゃんという娘さんに会いました。ですが、その後しばらくしてから同じ工場へ行くと、彼女のお母さんがいません。どうしたのかと聞くと、強盗に殺されてしまったというのです。社会から貧困がなくならなければ、またこうした悲劇が起こると思い、商売をすることで、現地の方たちの仕事をつくり、貧困、格差、不平等をなくすきっかけにしたいと考えました。
私は、商売にはすごくパワーがあると思っています。作る人、売る人、買う人、みんなを幸せにすることができるからです。全体を底上げしていい循環を生んでいく。それ自体がすごくオーガニックですよね。商品自体をオーガニックにして社会に広げていきたというのもありますが、同時に商売の在り方もオーガニックな経営でありたいと思っています。
オーガニックという選択肢をワクワクしたものとして広めるために、先月、原宿に初めての路面店「BROWN SUGAR 1ST. TOKYO ORGANIC」をオープンしました。コンセプトは東京ジャンクオーガニック。誰もが入りやすい店構えにして、アイスや飲み物などメニューもジャンクに近づけて。お客様には「おいしい!あれ?これってオーガニックなの?」と、今までまったくオーガニックに接点のなかった方にも興味をもっていただく入り口になればと考えています。