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私のごきげんな毎日

殿、利息でござる!

シネマキアート
殿、利息でござる!

阿部サダヲさん主演でこの映画のタイトルやポスタービジュアルからして、ただただ笑えるコメディ映画だと思われる方が多いと思います。確かにユーモアたっぷりで笑えるのですが、同時にびっくりするほど泣けるんです。今回は私が今年一番号泣した映画『殿、利息でござる!』を紹介したいと思います。

「時代劇が好き」と豪語しながら、このコラムで紹介したことがなかったのですが、私が思う時代劇の魅力は、1.義理人情、2.単純明快な勧善懲悪、3.華麗な殺陣(チャンバラ)です。本作は、王道の時代劇というわけではありませんが、3.以外の私の好きなポイントをしっかり押さえてくれています。

殿、利息でござる!

今から250年前の江戸時代。藩の重い年貢により夜逃げが相次ぐ宿場町・吉岡宿に住む造り酒屋の穀田屋十三郎(阿部サダヲ)は、知恵者である茶師・菅原屋篤平治(瑛太)から町を救う計画を聞く。それは藩に大金を貸付け、利息を巻き上げる「庶民がお上から年貢を取り戻す」逆転の発想だった。千両(約3億円)もの大金を水面下で集める前代未聞の頭脳戦が勃発し、その計画がバレれば打ち首確実。強欲お奉行の嫌がらせを乗り越えて、十三郎と仲間たちはさらに必死の節約を重ね、ただ町のため、人のため、私財を投げ打ち悲願に挑む。破産寸前、絶体絶命の大ピンチ…果たして彼らは町を救えるのか!?

原作は、2010年に映画化されたベストセラー「武士の家計簿」で知られる歴史家・磯田道史による近著「無私の日本人」(文春文庫刊)に収録されている一編「穀田屋十三郎」なのですが、なんとこれ実話なんだそう。常識や周囲に流されず、己の信ずる道を突き進む先人たちの姿は、今の時代にも通じるところがあり、私たちに勇気を与えてくれます。

殿、利息でござる!

やはり、なんと言ってもキャストと中村義洋監督が素晴らしい! 時代劇では初主演となる阿部サダヲさんと、中村組常連の瑛太さんや竹内結子さんとの独特の間の台詞まわしは最高の空気を生み出しています。言わずもがなですが、妻夫木聡さんは本当に才能豊かな俳優さんです。主役でも脇役でも善人でも悪人でも光る、日本映画界の宝だなとしみじみ思います。また、映画のタイトルにもなっている“殿”こと仙台藩藩主・伊達重村役に、フィギュアスケート選手の羽生結弦くんが映画初出演を果たしています。現場リハーサルのみでぶっつけ本番だったとは思えない、颯爽たる風姿にご期待ください! そして、『アヒルと鴨のコインロッカー』(2007)、『フィッシュストーリー』(2009)の中村監督の手腕がなければ、ただの普通のいい話で終わっていたと思います。今回も人間ドラマに深みを与える中村監督演出に涙腺崩壊で、かつ痛快な気持ちになりました。

殿、利息でござる!

普段、時代劇を観なくて抵抗がある方も『殿、利息でござる!』は、肩肘張らずに観ることができると思います。先日、主題歌がRCサクセションの「上を向いて歩こう」と発表されましたが、エンドロールでそれが流れる頃には、ポジティブで美しい気持ちになれるはず!

殿、利息でござる!

殿、利息でござる!
5月14日(土)全国ロードショー
(C) 2016「殿、利息でござる!」製作委員会

フリーランス エディター・ライター國方 麻紀(くにかたまき)
香川・丸亀出身、東京・吉祥寺在住のエディター・ライター。
女性誌『ELLE JAPON』『VOGUE JAPAN』のウェブエディター、ウェブサイト「GLAM」「tend」「BRASH」統括編集長を経て、現在はフリーランスに。好きな映画のジャンルは、バイオレンスや時代劇、B級など。
「このコラムを読んで普段観ないようなジャンルの映画にも興味を持ってもらえたらうれしいです!」
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